南米ベネズエラ大統領選は7月末、独裁色を強める反米左派マドゥロ大統領の「当選」を選挙管理委員会が発表した。ベネズエラ大統領選の結果と今後について坂口安紀・アジア経済研究所主任調査研究員に聞いた。
ベネズエラで合わせて25年もの間政権を握るチャベス前大統領と後継のマドゥロ大統領は、法律や制度を軽視し、権力を集中させ、すべての国家権力を手中におさめた。形ばかりの選挙を実施するものの、民主主義がじわじわと「溶解」し、権威主義へと変容していった。
今回の大統領選挙を理解する上で重要な点が二つある。選挙管理委員会や最高裁判所が政権の支配下にあるということ、そして選挙では自動投票・集計システムが使われるということだ。このシステムが導入された約20年前にはこのシステムに不信感を募らせ選挙をボイコットしたこともある反政府派だが、今回の選挙ではこのシステムを逆手にとって、自らの勝利を立証してみせた。マドゥロ政権や選管は、反政府派がこのような戦略を準備していたとは思いもよらなかっただろう。
反政府派の戦略は鮮やかだった。全国に設置された投票機は投票が締め切られると1台ずつ集計結果を自動印刷する。反政府派の選挙本部は、全国約3万台の投票機のうち約2万5000台が印刷した集計票の画像を集め、すべてオンラインで公開した。政権側の監視の目をかいくぐりながら、数日間でこれを成し遂げたのは奇跡的だと言える。
一方選管は、マドゥロ氏勝利と発表するも、それを裏付ける集計結果をいまだに公表できていない。反政府側が証拠を公表したため、ブラジルなどの左派政権もマドゥロ政権の「勝利宣言」を受け入れるわけにはいかなくなった。
マドゥロ政権は選挙後、反政府派政治家への弾圧を強めている。野党連合の統一候補・ゴンサレス氏はスペインへの亡命を余儀なくされたが、元外交官の彼は支持を集めるべくヨーロッパで多くの政治家と会っている。彼と二人三脚で選挙戦を戦ったマチャド氏は居場所を隠して国内にとどまり、オンラインで支持者を鼓舞し続けている。今後は、来年1月の大統領就任式がヤマ場になる。【聞き手・米村耕一】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。