ロシア軍の防空ミサイルシステム「Tor」(2017年8月、モスクワ州のアラビノ演習場にて) Andrey 69-Shutterstock

<爆破した「Tor」の価値は「1両およそ2500万ドル」とウクライナ国防省>

新たに公開された映像には、2年半以上にわたって熾烈な戦闘が続く前線で、ウクライナ軍が運用する米国製ドローンがロシアの短距離地対空ミサイルシステムを破壊する様子が映っている。

【動画】自爆型ドローン「スイッチブレード600」がロシアの地対空ミサイルシステム「Tor」に突入し、爆発する衝撃の瞬間

ウクライナ軍が新設した無人システム部隊に所属する無人航空システム第14連隊は10月28日、自爆突入型ドローンのスイッチブレード600がロシアの防空システム「Tor(トール)」を標的にし、攻撃する場面を記録したとする動画を投稿した。

この映像は、複数のオープンソース・インテリジェンス(OSINT)のアカウントとウクライナ国防省によってもソーシャルメディアで共有された。ウクライナ政府は、自軍の兵士が2機のドローンを駆使してTorを破壊したと述べているが、いつどこで撮影されたものかは明らかにしていない。

本誌はこの動画を独自に検証することができなかった。

米国のシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)によれば、Tor防空システムは自走式の短距離地対空ミサイルシステムで、約11〜16キロ離れた脅威を検知して迎撃できる。北大西洋条約機構(NATO)が付けたコードネームは「SA-15ガントレット」だ。

ウクライナ国防省によれば、Tor防空システムは1両でおよそ2500万ドルの価値があるという。

無人航空システム第14連隊は声明の中で、Torは「通常は無人航空機(UAV)狩りに使用される」と前置きし、「しかし、この日は立場が逆転した。狩る側が狩られる側になった」と述べている。

ウクライナはロシアの防空システム、とりわけ地上配備型のTor、Buk(ブーク)、Pantsir(パーンツィリ)、S-400といった地対空ミサイルシステムを執拗に狙い続けている。

ウクライナ軍を支援する「カムバックアライブ(生きて帰れ)財団」は6月、ロシアが支配するドネツク州の前線から後方にある地域で、スイッチブレードがロシアのBuk-M2地対空ミサイルシステムに狙いを定めているように見える動画を投稿した。

アメリカは軍事援助の一環としてスイッチブレード、フェニックス・ゴースト、サイバーラックスK8など数種のドローンをウクライナに提供している。米国防総省はウクライナに送ったスイッチブレードの数を明らかにしていない。

2022年5月の時点で、ウクライナ軍がスイッチブレードでロシア軍を狙う複数の動画がオンライン上に公開されていた。スイッチブレードは米国の防衛請負企業エアロバイロンメントが製造する自爆型ドローンで、ナイフのように翼が飛び出す仕組みになっている。

同社によれば、大型モデルのスイッチブレード600は最長40分間飛行可能で、遠くにある硬い標的を狙うための対戦車弾頭を搭載している。射程は約40キロで、戦場に散らばる敵の戦車や装甲車両を攻撃するよう設計されている。小型モデルのスイッチブレード300は最長15分の飛行が可能で射程は約10キロだ。

エアロバイロンメントのグローバル事業開発・マーケティング担当で副社長のチャーリー・ディーンは23年10月、本誌の取材に対し、ウクライナでは間もなくスイッチブレード600の使用数がスイッチブレード300を上回るだろうと語った。スイッチブレード600は「ウクライナの防衛にとって極めて重要だ」と、当時ディーンは述べていた。

(翻訳:ガリレオ)

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