高層マンションのような26階建ての養豚施設=中国・湖北省鄂州市で2024年8月31日午前10時35分、岡崎英遠撮影

 中国の習近平国家主席は「食糧安全保障の主導権を確保してこそ、強国復興の主導権を握ることができる」と繰り返し、今年6月には「食糧安全保障法」も施行された。長引く米中対立を背景に「自分の食いぶちを保てなければ、他人に指図されることになる」とも語って危機感を強める習氏の「号令」を実践する現場を訪ねた。

 中国内陸部・湖北省鄂州市。市の中心部から幹線道路を南に進むと、突然巨大な建物が出現した。高層マンションかオフィスビルのようだが、よく見ると窓がない。

中国の習近平国家主席=マカオで2019年12月18日午後4時22分、福岡静哉撮影

 実はこれは地元の人たちが「世界最大だ」と胸を張る26階建ての養豚場だ。元々セメントを扱う企業が40億元(約800億円)を投資して建設し、2022年秋から操業を開始した。給餌から清掃、消毒など多くの作業が自動化されており、それによって年間最大120万頭を飼育することが可能だという。

豚肉を買い求める人々でにぎわう北京市内の豚肉市場=北京市で2024年10月7日午後1時6分、岡崎英遠撮影

 古くから「猪糧安天下(豚肉と食糧が充足してこそ天下が安定する)」と例えられるだけに中国政府も豚肉の安定供給には神経をとがらせているようだ。

 「中国は自分で自分を養うべきだ」も習氏の持論だが、カロリーベースの食料自給率は00年前後のほぼ100%から、最近では7割強にまで下がってきている。これも習氏の危機感の背景だ。【北京・岡崎英遠】

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