米大統領選の候補者討論会の発言で名誉を傷つけられたとして、米東部ニューヨークで35年前に起きた冤罪(えんざい)事件の被害者5人が21日、トランプ前大統領を相手取り、損害賠償を求めて米ペンシルベニア州の連邦裁判所に提訴した。米メディアが報じた。
5人は黒人とヒスパニックの男性。いずれも当時10代だった1989年、ニューヨークのセントラルパークでランニング中の白人女性に性的暴行を加えたなどとして逮捕され、強要された自白の内容を基に有罪判決を受けた。服役後の2002年にDNA鑑定と真犯人の自白により無罪が確定した。
「不動産王」として知名度のあったトランプ氏は事件直後、死刑復活と警察力の強化を訴える新聞広告を出した。
この広告をめぐり、今年9月の大統領選討論会でハリス副大統領は、トランプ氏が「人種を利用して米国を分断してきた」と批判。これに対し、トランプ氏は5人が「罪を認めた」と発言し、「(当時)私は、彼らが罪を認めたのなら、人をひどく傷つけ、最終的には人を殺したことになる、と言った」と続けた。
AP通信によると今回、原告側は、当時の裁判で5人は強要された自白の内容を撤回し、無罪の主張を続けたと説明。トランプ氏の発言は「虚偽で中傷的」だと訴えている。被害者も存命している。
一方、トランプ陣営の広報担当者は「破れかぶれの左翼活動家によるくだらない選挙妨害訴訟だ」とする声明を出した。
人種差別と刑事司法制度の欠陥が浮き彫りになったニューヨークの事件は米国で大きな関心を集め、ドラマ化もされた。5人のうちの一人で、7年近く服役した後に無罪が確定した黒人男性のユセフ・サラームさんは現在、ニューヨーク市議を務めている。【ニューヨーク八田浩輔】
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