安全保障会議副議長として陸軍軍人と面会するメドベージェフ(2023年10月5日、ウリヤノフスク州の訓練場) Sputnik/Yekaterina Shtukina/Pool via REUTERS

<ウクライナの安全保障のためにはNATOに加盟するか核武装の必要がある、と語ったゼレンスキーに、メドベージェフ前大統領が核戦争の可能性を警告>

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友であるドミトリー・メドベージェフ前大統領は10月18日、核兵器使用に関する警告を発し、「時間は残りわずかだ」と述べた。

ロシアとウクライナの戦争が長引くなかNATOとロシアの緊張は高まっており、NATOの指導者たちは、ロシアとの直接衝突が現実的な可能性になるのではないかという懸念をあらわにし始めた。プーチン政権が核によるエスカレーションが起きるという脅しを繰り返していることから、警戒感が高まっている。

現在、ロシア安全保障会議副議長を務めるメドベージェフは、18日のテレグラムの投稿で、ウクライナが「汚い爆弾を作ろうとしている」と示唆。同国は「そのためのすべての資源を持っている」と付け加えた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週、欧州理事会に対し、ウクライナの安全保障のためには、NATOへ加盟するか、そうでなければ核武装の必要があると訴えたと明らかにした。

メドベージェフはこれに激しく反発した。「核兵器製造にまつわるウクライナの暴言を考慮すると、ある悲しい結論に至るしかない。あのナチスまがいの政権が『汚い爆弾』を作ろうとしている、ということだ。原料、技術、専門家など、そのための資源はすべてそろっている。残り時間はわずかだ」

ロシア政府は、「ネオナチ政権」がウクライナを支配していると主張することで、2022年のウクライナ侵攻を繰り返し正当化しようとしてきた。とはいえ、ウクライナ政府はもちろん、国際社会もロシアの主張を強く否定している。

メドベージェフの発言は、西側がウクライナに供給した兵器の使用制限をまもなく解除するという報道とも時を同じくしていた。

ウクライナはアメリカとイギリスに対し、アメリカの陸軍戦術ミサイル(ATACMS)とイギリスのストームシャドウ長距離巡航ミサイルによるロシア領土への攻撃禁止を撤回するよう強く求めてきた。戦争をエスカレートさせるという懸念から、使用が禁じられてきた。

ウクライナは、防ぐのが難しい滑空爆弾を発射するロシアの戦闘機が発着する空軍基地を標的にするため、長距離兵器が必要だと訴えている。ストームシャドウ・ミサイルの射程距離は約250キロだが、現在、ロシア軍に対して使用が許されているのは、ロシアに占領されたウクライナ領内に限定されている。

メドベージェフがウクライナ戦争における核兵器使用について警告したのは、これが初めてではない。彼は以前、NATO加盟国への核攻撃を訴えたり、ゼレンスキー大統領の抹殺を提案したり、たびたび暴言を吐いて話題になってきた。

メドベージェフは今年9月、核の使用についてテレグラムに投稿した。「ロシアは忍耐強い。核による反撃は、取り返しのつかない結果を伴う非常に複雑な決定であることは明らかだ。だが、傲慢なアングロサクソンの間抜けたちが認めないのは、相手の忍耐力を試すことができる時間は、それほど長くないということだ」

9月下旬、プーチンは自国の核兵器使用に関する基本原則を見直すと発表し、ウクライナとその同盟国による挑発行為は、「越えてはならない一線」を越えてロシアを核攻撃に踏み切らせる可能性があると警告した。

最新の核使用のガイドラインでは、「核保有国の参加または支援を受けている非核保有国によるロシアへの攻撃は、ロシア連邦への合同の攻撃とみなす」とプーチンは述べた。

本誌の取材に対し、米国務省はメドベージェフ発言の重大性を否定した。

「メドベージェフの言うことをいちいち真に受けることはない」と、国務省の広報担当者は答えた。「これは典型的なクレムリンの戯言だ」


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