シリーズ「激戦州の現場から」です。投票日まで2週間あまりとなったアメリカ大統領選で、民主党が最大の争点の一つと掲げる人工妊娠中絶をめぐる問題。その判断に揺れるアリゾナ州で翻弄された女性を取材しました。
クロエ・パートリッジさん
「娘を助けられず、ただそこにいる事しかできなかったのが本当に本当につらかった」
アメリカ西部の激戦州、アリゾナ州に住むクロエさん(24)。妊娠していたおととし、お腹の中の赤ちゃんに脳が発達しない疾患があると判明。医師からは「仮に生まれても数時間も生きられない」と告げられ、中絶の選択肢を示されました。
クロエ・パートリッジさん
「赤ちゃんがお腹の中で発作を起こして苦しんでいると知り、中絶することに決めました」
しかし、中絶手術の数日前。思いもよらないニュースが飛び込んできました。
アメリカ バイデン大統領
「最高裁はアメリカ国民から憲法上の権利を奪った」
連邦最高裁が女性の中絶の権利を覆す判断を下し、保守派が優勢な州では次々と中絶が事実上禁止に。
アリゾナ州でも160年前に成立した中絶を禁止する州法が施行され、クロエさんは医師から「手術はできない」と告げられます。
中絶ができる近隣の州で手術を受けようとしましたが、中絶に反対する保守派の人々から脅迫を受け、手術を断念せざえるを得なくなりました。
クロエ・パートリッジさん
「残りの妊娠期間はとてもつらかった。妊婦を見るとみんな『男の子?』『女の子?』と嬉しそうに聞いてくるから」
およそ3か月後、赤ちゃんを出産。しかし、自分で呼吸をすることもできず44時間後、ホスピスで息を引き取りました。
クロエ・パートリッジさん
「赤ちゃんが経験しなくていい多くの痛みを与えてしまった」
アメリカ ハリス副大統領
「女性が自分の体について決定する基本的な自由を!」
中絶をめぐる問題は大統領選の大きな争点の一つです。
ハリス氏は女性が中絶を選択できるよう州ごとではなく「全米統一の法律」を設けると宣言。最大の「攻め」のテーマとして、中絶問題を積極的に扱い、支持を訴えています。
一方、共和党を支持する一部の保守派は宗教上の理由などから全面禁止を求める人も多いため、トランプ氏は「州ごとの判断に委ねるべき」と述べるにとどまっています。
アリゾナ州では、大統領選と同日に従来通りの中絶の権利を認めるかどうかを問う住民投票が行われる予定で、世論調査では半数以上の有権者が賛成に投じると回答しています。
しかし、大統領選における支持率では、ハリス氏がトランプ氏に3ポイントリードされていて、中絶の権利を訴えることで巻き返しを図りたい考えです。
ハリス氏の集会に参加
「(Q.最も重視する問題は)中絶の権利です。自分の体をどうするかは自分で決めることだと思うから」
クロエさんもすべての女性が自由に選択できる世の中になって欲しいと願っています。
クロエ・パートリッジさん
「同じ疾患の子どもを妊娠した人がいても私はその人の決めた選択を支持します。医師と話して、家族にとって最適だと思う選択ができるようになって欲しい」
中絶問題をめぐる歴史的な判決後、初となる今回の大統領選。同じ日に行われる住民投票がアリゾナ州の有権者たちにどのような影響を及ぼすのか注目されます。
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