大統領選の勝利を喜ぶプラボウォの支持者(今年4月、ジャカルタ) AP/AFLO

インドネシアのプラボウォ新大統領(10月20日に就任式)は、1期目に年間8%の経済成長を実現し、2045年までの高所得国入りを目指す野心的目標を掲げた。

だが、プラボウォのアプローチは既に目標とずれているようにも見える。先日決まった内閣の拡大は省庁の数を44に増やすもので、内閣の任用ポストは計100人近くに膨れ上がる。


制度改革と効率化に対する新政権の本気度が疑わしくなる動きだ。大統領選での支援に対する政治的見返りの印象が拭えない。

プラボウォの成長目標を達成するには制度改革が不可欠だ。競争力、透明性、イノベーションを促進する構造改革と行政機構の効率化がかつてなく求められている。だが、官僚機構の肥大化は行政コストの増大と意思決定の遅れを招きかねない。

気がかりなのは、経済的繁栄の重要指標である中間層がここ数年、縮小し始めていることだ。インドネシア中央統計庁(BPS)によると、全人口に占める中間層の割合は、19年の22%から23年には17%まで減少した。

この傾向は新型コロナ危機の前から始まっている。正規部門の賃金の伸び悩みから格差拡大まで、インドネシア経済が直面するより広範な課題を反映した数字だ。

中間層は消費の主役として商品やサービスの需要を生み出し、政治的安定に寄与する存在だ。その減少は消費の低迷に加え、より広範な社会の不安定化リスクを高める。

その意味で中間層の成長を支える産業、特に製造業やサービス業の雇用創出は極めて重要だ。しかし、インドネシアの製造業は1990年代の勢いをなかなか取り戻せない。

省庁の増加が懸念を呼ぶ大きな理由の1つは厳しい財政事情だ。対GDP比の政府債務残高は着実に増加しており、プラボウォはさらに増やすと公約している。


財政問題の対処法の1つは歳入の増加、特に税制改革だ。インドネシアの対GDP比の税収率は長年10%前後の低率にとどまっている。

プラボウォが目指す16%を達成するには課税基盤の拡大、特に労働人口の60%近くを占める非正規部門の正規化が決定的に重要だ。税収増に加え、雇用の安定や社会保障の対象拡大も期待できる。

ただし、それと同時に歳出の効率化も欠かせない。例えば、燃料補助金は長年にわたり国家予算の重荷になってきた。ジョコ前大統領は補助金の大幅削減を断行したが、教育、医療、社会的弱者への直接補助など、より生産性の高い分野に支出を振り向けるための改革がさらに必要だ。

長期的な成長を達成するためには、財政だけでなくグローバル経済への統合も不可欠だ。新政権はより多くの海外直接投資(FDI)を引き付けるために、国際貿易基準に合わせたルール作りを優先させる必要がある。

しかし、インドネシアのFDIは、2014年の対GDP比2.8%から2022年には1.9%まで減少している。インドネシアの経済成長が2014年以降5%前後で停滞している理由の1つだ。

インドネシアは岐路に立っている。より高い経済成長のために必要な厳しい改革を受け入れるか、非効率と機会損失の道を歩み続けるか。

8%の成長を達成するためには、省庁の増加だけでなく、抜本的な制度改革、中間層成長へのテコ入れ、バランスの取れた財政、国際貿易基準へのコミットメントが必要だ。


From thediplomat.com

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