中国国営企業のロゴマークの透かしが入っていた問題に関する内閣府の説明資料

内閣府「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(再エネTF)構成員の大林ミカ氏(自然エネルギー財団事業局長)が政府に提出した資料の一部に、中国の国営送配電会社「国家電網公司」のロゴの透かしが入っていたことが3月に発覚した。大林氏は「ミス」と釈明し構成員を辞任。しかし別の資料でも透かしは見つかった。中国企業が同財団を通じ日本の政策に影響を与えようとしたという疑惑は消えない。

反原発を主張する河野太郎内閣府特命担当大臣が作った再エネTFの問題を巡り、「再エネ資料にロゴ 中国の影響力工作を疑え 河野担当相の責任は重大だ」(産経新聞主張、4月1日付)といった批判的な論調もあるが、一部の新聞はなぜか静かだ。朝日新聞の記事データサービスで「大林ミカ」と検索すると、30件近く登場するが、問題発覚後は1件のみ。大林氏は反原発運動を支える市民団体「原子力資料情報室」出身の人物だ。そのような立場の人が、ここまで頻繁に記事に登場するのは異様といえる。

同紙は「大林ミカさん 国際太陽エネルギー学会の賞を受けた」(平成29年11月27日付)と紹介。「原発ゼロをたどって‥6 仲間はもう増えないのか」(30年7月31日付)で、立憲民主党議員らと原発ゼロ基本法案作成に動く彼女を「『自然エネルギーのジャンヌ・ダルク』とも呼ばれる」などとたたえた。

東京新聞はロゴ問題について「これって『再エネヘイト』では?」(今年4月20日付)との記事を掲載。「原子力ムラの巻き返し」とする識者コメントを載せ、再エネたたきが騒動の理由だとした。こうした新聞にとって、大林氏は「反原発」「再エネ振興」を主張する〝仲間〟のようだ。だから問題を深く追及せず、擁護を行ったのだろう。しかし、それでいいのだろうか。

岸田文雄首相は、3月25日の参議院予算委員会で「外国が日本のエネルギーシステムに関わることはあってはならない」と発言。まさに事の本質はそこにある。個人が再エネ振興や反原発を主張することは自由だ。しかし、そうしたきれいごとを表に出しながら、裏で中国政府が日本にエネルギー分野で政治工作をしているかもしれない。その可能性を、新聞の読者である日本国民は警戒している。

新聞・メディアはこの問題の真相究明を進めてほしい。そして大林氏を礼賛した過去の記事についても説明すべきだ。エネルギーを外国に乗っ取られたら日本の存立が危うくなる。

■石井孝明

いしい・たかあき 昭和46年、東京都生まれ。慶応義塾大学経済学部卒、時事通信記者などを経てフリーに。経済・環境情報サイト「with ENERGY」を主宰。著書に『京都議定書は実現できるのか』など。

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