イランの弾道ミサイル攻撃対策でアメリカがイスラエルに送るTHAAD。運用のために米軍100人がついていく(2013年9月10日、北マリアナ諸島) Photo by U.S. Army via ABACAPRESS.COM

<派遣された米兵がイランの報復攻撃に巻き込まれれば、アメリカはイスラエルと共に反撃せざるをえない>

米国防総省は10月13日、イランによる攻撃の可能性に備えて、イスラエルに米軍のTHAAD(高高度防衛ミサイル)とその運用部隊100人を米軍から派遣すると発表した。これについて元米空軍大佐のセドリック・レイトンは米CNNの取材に対して、イスラエルに派遣された米部隊に対する攻撃があれば、アメリカが中東での紛争に巻き込まれる危険があると指摘した。

中東では10月はじめにイランがイスラエルに向けて約200発の弾道ミサイルを発射した後、緊張が高まっている。イスラエル軍はこれらの弾道ミサイルのほとんどを迎撃し大きな被害はなかったものの、一部が空軍基地を含むイスラエル領内に着弾したと述べた。

レイトンは、THAADは短距離や中距離の弾道ミサイルに対抗する進んだシステムで、大気圏内だけでなく大気圏外でも迎撃できる。イスラエル防空の3本柱である「ロケット弾迎撃用アイアンドームとダビデ・スリング(ダビデの投石器)、そして弾道ミサイル迎撃用アローシステム」を補強するものになるだろうと述べた。一方でアメリカから派遣されるTHAAD運用部隊にはリスクが伴うとも指摘。CNNに対して、もし米兵が「いかなる形であれ危害を受けた場合にはアメリカが戦争に巻き込まれる可能性があり、それは現時点で想像し得る以上の重大な結果をもたらす可能性がある」と述べた。

地域戦争へ拡大の懸念

米国防総省は本誌の取材に対し、13日に発表した声明を引用してTHAADは「イスラエルの防空システムを強化」してイランによるさらなる弾道ミサイル攻撃からイスラエルを防衛し、イスラエルにいる米市民を守るという揺るぎない決意を強調するものだと述べた。

また国防総省は声明の中で、アメリカは2023年10月7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを襲撃した後と、それ以前にも2019年に演習目的でTHAADをイスラエルに配備しており、これが初めてではないと述べた。

こうしたなか14日には、イスラエルがレバノン北部の町アイトゥを攻撃。レバノン当局者らは、この攻撃で少なくとも18人が死亡したと発表した。1年前から続く対立の中で、キリスト教徒が多く暮らすレバノン北部がイスラエル軍の標的にされたのは初めてだ。

イスラエルはイランと親密な関係にある複数の高官を標的にしており、9月末にはレバノンの首都ベイルートでヒズボラの指導者ハッサン・ナスララを殺害した。イスラエルがレバノン各地への攻撃を続けるなか、イランによる報復や地域戦争への拡大に対する懸念が高まっている。14日夜にはイスラエル北部のハイファ南方にあるイスラエル軍の基地がヒズボラによるドローン攻撃を受け、イスラエル兵4人が死亡した。

こうしたなか、イスラエル諜報機関の元高官であるアビ・メラメッドは本誌に対して、イスラエルの占領下にあるゴラン高原と接するシリア側の緩衝地帯で、イスラエルが限定的な地上作戦を開始したという報告があると述べた。

この緩衝地帯はシリア軍の拠点に近く、レバノンのヒズボラなどイランの支援を受けている民兵が活動していることが知られている。このことはイスラエルが、これらの民兵組織が国境付近にあるイスラエルのコミュニティーに対して攻撃を仕掛ける計画を立てているという情報を基に行動している可能性を示唆している。

メラメッドは「イスラエルが10月1日のイランによるミサイル攻撃への報復として、イランを攻撃した場合、これらの民兵がイランの幅広い報復戦略の一環としてイスラエルの領土への攻撃を行う可能性がある」と指摘した。

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