米中西部ミネソタ州のティム・ウォルズ知事(民主党)=2024年8月21日、秋山信一撮影

 11月の米大統領選の民主党副大統領候補である中西部ミネソタ州のウォルズ知事は8日、大統領選は将来的に有権者の一般投票の合計獲得票数で当落を決めるべきだとの考えを示した。米メディアが報じた。

 州ごとに割り当てられた選挙人の数を争奪する現行制度からの変更は世論の支持も大きいが、現行制度下で自州の結果が大統領選の当落を左右する接戦州では「影響力の低下」につながるとの懸念がある。ウォルズ氏の発言は、接戦州がカギになる大統領選終盤で民主党に悪影響を与える可能性がある。

 共和党のトランプ前大統領は9日、接戦州の東部ペンシルベニア州で演説した際にウォルズ氏の発言を紹介。「(民主党は)ペンシルベニアのような州から選挙の力を奪おうとしている。民主主義への脅威なのは、私ではなく、彼らだ」と批判し、有権者にアピールした。

 大統領選では、人口などに応じて各州と首都ワシントンに割り当てられた計538人の選挙人の獲得数を競う。大半の州は選挙人の配分について「勝者総取り」方式を採用。民主党または共和党の優劣が明確な州では選挙前から結果が分かりきっており、選挙への関心の低下につながっているとの批判がある。

 報道によると、ウォルズ氏は西部カリフォルニア州で開かれた資金集め集会で、「我々は皆、選挙人制度はなくならなければならないと分かっていると思う。全米一般投票が必要なのだ」と訴えた。制度変更は世論も支持しており、2024年9月発表のピュー・リサーチ・センターの調査でも63%が「一般投票の総得票数で大統領を決めるべきだ」と回答した。

 ただ、近年、一般投票で劣勢の共和党には、制度変更に反対する声も根強い。00年のブッシュ(子)氏や16年のトランプ氏は、一般投票で負けたものの、接戦州を制して選挙人の獲得数で民主党候補を上回った。現行制度は憲法で規定されているが、共和党が反対する中で憲法を改正するのは難しいのが現状だ。

 そこで、憲法改正を避けて、「州の選挙人を全米の一般投票の勝者に配分する」と約束する州間協定の参加州を増やすことで、制度変更を目指す動きがある。参加州の選挙人の合計が過半数の270人になれば協定は発効する。これまでに17州とワシントンが賛同して209人に達しており、あと数州が参加すれば発効する段階まで来ている。【ワシントン秋山信一】

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