フィリピンのドゥテルテ前大統領=マニラで2016年11月9日、AP

 フィリピンのドゥテルテ前大統領(79)が来年5月の中間選挙で、地盤の南部ダバオ市の市長選に立候補した。ドゥテルテ氏はマルコス大統領との対立姿勢を鮮明にし、国政への返り咲きを狙うとも目されていたが、地方で政界復帰を目指すことになった。大統領時代の「麻薬撲滅作戦」を巡る国際刑事裁判所(ICC)の捜査を逃れるため、政権との緊張緩和を図る意図もあるとみられている。

 中間選挙では、下院(317議席)の全てと上院(24議席)の半数が改選されるほか、地方自治体の首長選などがある。ドゥテルテ氏は7日に立候補を届け出、8日に締め切られた。

 地元メディアによると、ドゥテルテ氏は7日、「皆さんに奉仕したい」とコメント。次男でダバオ市長のセバスチャン氏は副市長選に出馬する。また、長男のパオロ下院議員は再選を目指す。

 ドゥテルテ氏の長女で副大統領のサラ氏は6月、ドゥテルテ氏とその息子らが上院選に出馬する予定だとし、対立が深まるマルコス氏に一家で「挑む」姿勢を示した。

 しかし国内では、ドゥテルテ氏が大統領在任中(2016~22年)に展開した麻薬撲滅作戦に関し、ICCが近く逮捕状を出すとの報道が出ている。政権との対立が強まれば、これまで国内でのICCの捜査を拒否してきたマルコス氏が立場を変える可能性もある。ドゥテルテ氏としては、国政には関与しないことで緊張関係を緩和させたい考えがあるとみられている。ドゥテルテ氏は最近になり、「国政は年齢的に厳しい」と述べていた。

 一方、地元メディアは、今も地元で人気が高いドゥテルテ氏の市長選出馬は、28年に予定される大統領選に立候補するとみられるサラ氏への支持を強固にするためだとの見方も示している。【バンコク石山絵歩】

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