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世界の大きなニュース、いろいろありますが、日本にどう関係してくるのか、地図を使ってみるともっとよくわかります。そこで今回は地図を使って今の世界情勢について解説してまいります。

■「危険」な国や地域ってどこ?

皆さんは危険な国や地域というとどこを思い浮かべますか?イスラエルとの戦闘がニュースとなっているパレスチナ地域、ウクライナやロシア、などを挙げる人が多いかと思います。
でも実は今行くと「危ない」と言われる国や地域はほかにもたくさんあります。

こちらは外務省が出している海外安全情報です。簡単に言えば「世界の危険度マップ」です。
危険レベルが4段階で示されています。こうしてみると日本ではニュースになっていなくても、色がついている国がたくさんあることがわかります。

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この中で今気を付けておきたいのがウクライナとロシアの問題です。

■ロシアのウクライナ侵攻…今重大局面に!?

ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2年半が経ちました。最近ではニュースになることが減りましたが、実は今大変な局面を迎えているんです。第3次世界大戦になるかもしれないそんな危機的な状況に陥っています。
是非知っておいていただきたいので、丁寧に解説してまいります。

これまでロシアとウクライナの戦闘と言えば、ウクライナがロシアに一方的に攻め込まれている、そんなイメージありませんでしたか?もちろんウクライナが一部取り返した、とニュースになった時もありましたが、基本ロシアに攻め込まれ、領土の一部を占領されているというイメージではないでしょうか。膠着状態が長く、いつ終わるのか、出口が見えない、という印象ですよね。でも最近その状況が変わってきたんです。

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■ウクライナがロシアに攻め込んだ!?

■ウクライナがロシアに攻め込んだ!?

これは9月段階の戦況を地図で表したものです。
赤い部分がロシア軍の占領エリアです。この地図を見て、これまでと大きく違うところ、気が付きませんか?
緑の部分、ここがこれまでとの違いです。ここはウクライナが今占領している地域なんです。

これまでウクライナは、ロシアが自国内に攻め込んできたところを応戦するだけでした。でもそんな守る一方だったウクライナがこの夏、ついに国境を越えてロシアのクルスク州に攻め込んだんです。そして今もその一部を占領しているんですね。ロシアが取り返した部分もありますが、まだまだウクライナの占領は続いているんです。広大なロシアからすればごくわずかな面積ですが、それでもロシアが外国の軍隊によって自国の領土を占領されるなど第2次世界大戦以来のこと。ロシアは世界第2位の軍事力を誇る強国。それが攻め込まれて占領されたのですから、プーチン大統領とすればメンツ丸つぶれです。

ではなぜ軍事力ランキング18位のウクライナが強国ロシアを一部とはいえ占領できたのでしょうか。
実は占領されたあたり、ロシアの守りが手薄だったと言われています。今ロシア軍の主力は激戦地帯の東部に集中しています。そのためこのあたりの国境は軽武装の国境警備隊や、経験の浅いの兵士などが守っていて、比較的手薄だったと言われてるんです。

■なぜ今?ウクライナはロシアに攻め込んだ理由とは

でもここで疑問がわきます。2年半応戦一方だったウクライナが、なぜ今になってロシアに攻め込んだのでしょうか?これにはいくつかの理由があると言われています。

まずは「ロシアとの停戦交渉を有利にしたい」というゼレンスキー大統領の思惑です。
たとえ小さな地域であってもウクライナがロシアの一部を占領していれば交換条件としてロシアが占領している地域の一部でも取り戻せるのではないか、さらにはロシアが国境警備も厚くするようなことがあれば、東部の激戦区からロシア軍が減り、停戦交渉にプラスになるのではないか、そう考えたとみられています。
もちろんここを攻撃したら激戦区である東部のロシア軍は手薄になりますから、それを狙ったという面もあるでしょう。

もう一つ、大きな理由がウクライナの「焦り」です。

アメリカは今大統領選挙を控えています。共和党の候補、トランプ氏は「自分が大統領になれば24時間以内にウクライナとの戦いを終わらせる」と言っています。これはつまり、ウクライナへの支援をやめることによって戦争を終わらせる、という意味です。そうなればウクライナは負けるしかない。トランプ氏が大統領になったらその可能性があるわけです。

プーチン大統領とすれば時を味方につけて待っていればいいわけです。今ウクライナを支援している国もいずれ疲弊してくるでしょうし、もしトランプ大統領が当選すれば戦争を終わらせてくれるわけですから。そんな状況に焦ったウクライナがロシアに向けて攻め込んだ、そうみられているわけです。

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■ウクライナによるアメリカへのメッセージ!?

■ウクライナによるアメリカへのメッセージ!?

さらにもう一つ。ウクライナにはこんな「焦り」もあると言われています。
今アメリカがウクライナに提供しているミサイルは、ロシア領内への使用は制限されています。あくまでもウクライナ領内で応戦するためのもので、ロシア領内へ向けて撃ちこむのはダメ、という条件付きなんです。これまでずっとそれでやってきましたが、どうやってもロシアを追い返すことができない。
そこでウクライナは武器を供与してくれる各国に対し「ロシア領内にミサイルを撃ち込むのを認めて欲しい」「何ならモスクワのクレムリン(大統領府)まで届く長距離ミサイルを使わせてほしい」と言い出しているのです。
大きな変化ですよね。

このウクライナの要求に対してフランスやイギリスは長距離ミサイルの使用を「認めてもいいかも」、と態度を変えてきています。そのわけは先日イランからロシアに200発以上の短距離弾道ミサイルが渡された、という報道があったから。ロシアは長期の戦いで兵器が不足していると見られています。でもイランからミサイルが供給されるとなれば話は変わってきます。今後ウクライナに更なる大きな被害が出るかもしれません。そこでウクライナの要求を認める国が出始めている、というわけです。

アメリカはまだウクライナの長距離ミサイルの使用を認めていません。なぜだと思いますか?ロシアは大量の核兵器を保有しています。そんなロシアを刺激しすぎると核兵器を使ってくるかもしれないからです。モスクワまでどんどんミサイルが飛んでくるような状況となれば、当然プーチン大統領は激怒しますよね。それこそ第3次世界大戦にまで発展してもおかしくはありません。

でもウクライナとしてはなんとかミサイルの力を使ってでもロシアを押し返したい。そこで今回これだけのロシア領地を占領して見せて、「ほら、これでもロシアは核兵器を使ってこないよ、これならロシアにミサイルを撃ち込んでも大丈夫でしょ」…アメリカにそんなメッセージを送っていると見られているんです。

しかしそのメッセージによってアメリカは慎重な判断を迫られている、今はそんなギリギリの状況なんです。

ロシアとウクライナは遠い国の戦いですから私たちにとっては関係ない、と思うかもしれません。しかし第3次世界大戦となればまさに大事です。今世界で何が起きているのか、ここは是非注意深く見ていっていただきたいと思います。

(池上彰のニュースそうだったのか!! 10月5日OAより)

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