イスラエル軍の攻撃により煙が上がる街並み=レバノン南部で2024年9月25日、ロイター

 イスラエル軍のハレビ参謀総長は25日、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに対する空爆について「進攻の地ならしであり、ヒズボラを引き続き弱体化させるためでもある」と語った。地上侵攻の可能性に言及することで、ヒズボラをけん制する狙いがあるとみられる。

 ハレビ氏は攻撃について、避難生活を続けるイスラエル北部の住民の「安全な帰還」が目的だと改めて強調。そのうえで「目的達成のため、作戦の準備をしている。ヒズボラが拠点としている村に入ることになるだろう」と語った。

 ヒズボラはパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスを上回る軍事力を持ち、イスラエルにとっても全面衝突や地上侵攻はリスクがともなう。ただ、イスラエルのネタニヤフ首相は25日も「住民を安全に帰還させる決意を固めている」と述べた。

 地上侵攻も辞さない構えをとることで、ヒズボラによる攻撃を抑止し、住民帰還という成果をあげたい考えとみられる。

 イスラエル軍は25日もレバノン南部などに空爆を続けた。レバノン保健省によると、この日の空爆で少なくとも51人が死亡、223人が負傷した。一方、ヒズボラは25日、商都テルアビブ近郊にあるイスラエルの対外諜報(ちょうほう)機関モサドの本部を標的にミサイルを発射した。イスラエル軍に迎撃され、死傷者は出なかったが、ヒズボラはイスラエル中心部を標的とすることで、反撃の規模を拡大させた形だ。

 ロイター通信によると、レバノンの旧宗主国であるフランスやイスラエルの最大の支援国となっている米国は、全面衝突を避けるため停戦案を準備している。だが、今のところ大きな進展はないという。

 一方、イスラエルメディアなどによると、イラクを拠点とする親イラン武装組織は25日、イスラエル南部エイラートに無人機攻撃を行ったと発表した。2人が軽傷を負ったという。ヒズボラとの交戦拡大を機に、周辺国の親イラン武装組織による攻撃も激化する恐れがある。【エルサレム金子淳】

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