イスラエル軍が24日、レバノンの首都ベイルート南郊で行った空爆で、イラン支援下にあるレバノンの武装組織ヒズボラのロケット部隊幹部が死亡した。写真はイスラエル北部のレバノンとの国境地帯で5月撮影(2024年 ロイター/Ayal Margolin)

イスラエル軍は24日、レバノンの首都ベイルートへの空爆で親イラン民兵組織ヒズボラ幹部の1人を殺害したと発表した。双方による越境ロケット弾攻撃により、中東で紛争拡大懸念が一段と高まっている。

イスラエル軍によると、死亡したのはヒズボラのミサイル・ロケット部隊のイブラヒム・クバイシ司令官。ヒズボラ側も死亡を確認した。

イスラエル軍は、レバノン南部全域のヒズボラの標的に対して「大規模な攻撃」を行い、攻撃対象には武器貯蔵施設やイスラエルを狙った数十基の発射装置も含まれているとした。

イスラエルは2日連続でレバノン各地のヒズボラ支配地域を攻撃している。23日に実施した大規模な攻撃では、500人近くが死亡。1日の死者数としては1975─90年の内戦以来、最多となった。

情報力と技術力で優位

レバノン保健相によると、2日間の死者は569人で、うち50人が子どもだという。負傷者は1835人に上っている。

イスラエルの情報収集能力と技術力は、レバノンとパレスチナ自治区ガザの両方で強い優位性をもたらしている。イスラエルはヒズボラの最高司令官やイスラム組織ハマス指導者らを追跡し暗殺してきた。しかし、ヒズボラはイスラエルとの数十年にわたる敵対関係の中で強い抵抗力を見せており、ハマスよりも手強い敵とされる。

ヒズボラはこの日、メッセージングアプリ「テレグラム」への投稿で、イスラエル軍基地への攻撃に新型ロケット「ファディ3」を使用したと発表。また、イスラエル北部のダド軍事基地にロケット弾を発射したほか、ハイファ南部のアトリット海軍基地をドローンなどで攻撃したとも明らかにした。

イスラエル軍は、ダド基地がある北部の都市サフェドとその周辺地域で夕方にサイレンが鳴ったと述べたが、基地が攻撃されたかどうかは明らかにしなかった。

イスラエルのガラント国防相は軍との協議の中で、ヒズボラはその指揮系統や戦闘員、戦闘手段に深刻な打撃を受けているとの見解を示した。また、イスラエル北部の住民の安全な帰還を確実にするという目標が達成されるまで、イスラエルはレバノンにあるヒズボラ拠点への攻撃を続けると述べた。

国連安全保障理事会は、イスラエルとヒズボラの紛争激化について協議するための会合を25日に開くと発表した。グテレス事務総長は「レバノンは危機に瀕している。レバノン国民、イスラエル国民、そして世界の人々は、レバノンが第二のガザになることを許容できない」と述べた。

バイデン米大統領は国連総会で一般討論演説を行い、中東情勢について「全面戦争は誰の利益にもならない。状況が悪化しても、外交的解決はまだ可能だ」とし、緊張緩和を呼びかけた。

一方、レバノンのハビブ外相はニューヨークでのイベントで、バイデン氏の演説は「力強くなく、期待も持てない」と指摘。米国は「中東で本当に変化をもたらすことができる」唯一の国だとし、「われわれの救済の鍵だ」と語った。

ガラント国防相は、国連がイスラエルに対するヒズボラの攻撃を阻止する責任を怠っていると非難した。



[ロイター]


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