ロシア、中国、イランのサイバー攻撃と選挙介入が立て続けに明らかに DA-KUK/ISTOCK

<アメリカ大統領選を前に、ロシアによる偽情報の拡散が強まっている。ハリス副大統領に関する虚偽の事件が次々と広められ、選挙干渉の試みが浮き彫りになった>

11月5日の米大統領選投票日まで残り40日余り。この10日ほどは、アメリカと敵対する国々が選挙への干渉や妨害に精を出していることが改めて浮き彫りになった。ロシア、中国、イランからのサイバー攻撃と選挙介入の動きが立て続けに明らかになったのだ。

9月17日発表のマイクロソフトの報告書によると、ロシアのサイバー団体が最近、ハリス副大統領への攻撃を強めている。例えば、ハリスの支持者がトランプ前大統領の選挙集会でトランプ支持者に暴力を振るう場面と称するニセ動画や、ハリスが自動車の引き逃げ事件に関係したというニセのニュース動画を拡散させているという。

【動画】ロシアのフェイクニュース拡散...ハリスが関与したとされる「虚偽の事件」とは?


バイデン政権は、ロシアによるニセ情報拡散などへの対抗策を強化してきた。ブリンケン国務長官は13日、ロシア政府系メディア「RT」がロシアの情報機関と直接結び付いたサイバー活動能力を擁しており、ロシア軍がウクライナ侵攻で用いる兵器を購入する資金を調達するためのクラウドファンディングも行っていると指摘して、RTへの制裁強化を発表した。

「全ての同盟国に対して、自国内でのRTの活動をほかのロシア情報機関の活動と同様に扱うよう強く促す」と、ブリンケンは語った。これを受けて、メタなどのテック企業も自社のプラットフォームからRTのコンテンツとアカウントを排除した。

18日には、FBIのレイ長官がもう1つの敵対国、中国からの攻撃をはね返したと明らかにした。

レイによると、中国政府の指示により活動するハッカー集団「フラックス・タイフーン」は、ネットに接続した数十万台のカメラやストレージなどに侵入して巨大なネットワークを構築し、スパイ活動や重要システムの攪乱を行おうとしていたという。「最終的に、自分たちが対峙している相手がFBIなどであることに気付いて、ネットワークを放棄した」とのことだ。

米政府が中国のハッカー集団に対するサイバー作戦を実行したのは、昨年12月に続いてこの1年間で2度目だ。こうしたことは今後さらに続くだろうと、米政府関係者は指摘している。

イランも活動を活発化させている。FBIなど3つの米政府機関は18日、大統領選のトランプ陣営を標的としたイランの活動についての声明を共同で発表した。

この声明によると、イランのハッカーたちはトランプ陣営のネットワークに侵入して非公開の情報を盗み出し、大統領選撤退前のバイデン陣営と関わりのある人たちに電子メールで送り付けていたという(受信者が返信したことを示す情報は、現在のところないとのことだ)。


イランは、アメリカの重要な同盟国であるイスラエルとの代理戦争が激化するなかで、米大統領選への介入を強めている。専門家によれば、特にトランプ陣営を攻撃の標的にしているのは、2020年に当時のトランプ政権がイラン革命防衛隊の精鋭部隊を率いていたソレイマニ司令官を暗殺したことへの報復の意味があるようだ。

サイバー防衛の専門家の一致した見方によれば、直近ではアメリカがいくつかの勝利を収めたものの、戦いはまだまだ続く。なにしろ、極めて強力な3つの敵が──たとえ直接手を携えてはいなくても──同じ目的に向けて行動しているのだから。

From Foreign Policy Magazine

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。