イスラエルの攻撃を受けたレバノン南部の街で生存者を探すレスキュー隊(9月21日) Photo by Fadel Itani/NurPhoto
<ヒズボラ戦闘員が所持していた通信機器が一斉に爆発した攻撃以降、イスラエルとヒズボラの間で攻撃の応酬が激化している>
イスラエルが隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに毎日激しい攻撃を続けている。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は9月22日、レバノンを「もう一つのガザ」にすることは許されないと警告した。
【動画】イスラエルとヒズボラの犠牲、戦闘開始後最悪に
パレスチナのガザ地区ではイスラム組織ハマスとイスラエル軍が11カ月にわたって戦闘を続けており、ハマスとの連帯を表明しているヒズボラもまた、イスラエル軍との衝突を繰り返してきた。
こうしたなか、17日と18日にヒズボラのメンバーが所持していた電子機器を狙った大規模な攻撃が続いた。ポケベルやトランシーバーを持っていたヒズボラの戦闘員が、巻き込まれた民間人も含めて数千人が死傷した。
イスラエル軍はその翌日からレバノンのヒズボラの拠点に空爆を開始、ヒズボラもロケット弾を撃ち返した。その規模は日毎に大きくなっている。23日にはレバノン国内のヒズボラ拠点1300カ所を攻撃。レバノン保健省によると492人が死亡した。ヒズボラも、イスラエル北部の空軍基地や軍需企業に向けて100発超のロケット弾を発射した。
グテーレスは米CNNのインタビューの中で、ヒズボラのメンバーが所持していた電子機器を狙った攻撃について「事態が今よりもさらにエスカレートする可能性がある。私が懸念しているのは、レバノンがもう一つのガザになってしまう可能性だ。それは世界にとって壊滅的な悲劇になる」と述べた。
本誌はこの件について国連、イスラエル外務省と在レバノン米大使館にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。
「全面戦争に近づいている」
ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を行い、約1200人を殺害して250人前後を人質に取ってから、2024年10月7日でまる一年になる。ガザ地区には現在も約100人の人質が拘束されており、そのうち3分の1は既に死亡しているとみられている。
ハマスの奇襲攻撃への報復としてイスラエルはガザ地区で軍事作戦を展開し、ガザ保健省によれば、これまでに4万1000人超のパレスチナ人が命を落としている。国連総会も国連安保理も、ガザ地区での即時停戦と人質の即時かつ無条件の解放を呼びかける。
ヨーロッパとイスラエルの関係強化を目指す非政府組織「ELNET(European Leadership Network-Israel)」の広報担当者であるダニエル・シャドミーは本誌に対し、「事態はかつてないほど全面戦争に近づいているが、まだ後戻りできない段階ではなく、全面戦争を回避することは可能だ」と言った。「イスラエルとヒズボラの報復合戦が続くにつれ、誤算や劇的なエスカレーションの可能性が大きくなる」
中東地域のアナリストで元イスラエル諜報機関の当局者であるアビ・メラメドは本誌に対して、「イスラエルはヒズボラとの戦闘について、次の段階への移行を現実的な選択肢として検討していると示唆しているが、これは避けられない事態ではない」と述べた。
メラメドはさらに「特にヒズボラが深刻な打撃を受けた今、イランとヒズボラはイスラエルとの小競り合いを終わらせることに関心を持っている」と述べた。「おそらく今後、ガザでの戦闘を少なくとも一時的に停止させるための合意を目指すよう、イランが(ハマスの指導者である)ヤヒヤ・シンワールへの圧力を強めるだろう」
米ケーブルテレビネットワーク「ニュースネーション」のワシントン特派員であるケリー・マイヤーが22日午後にX(旧ツイッター)に行った投稿によれば、ジョー・バイデン米大統領は中東での紛争激化について懸念しているかという質問に対して「イエス」と答えた。
「我々はより幅広い戦争が勃発するのを防ぐために全力を尽くしているし、今後もできる限りのことをしていく」
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