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 18日、中国・深センで痛ましい事件が起きた。日本人学校に通う10歳の男児が、登校中に中国人の44歳の男性に刃物で襲われ亡くなった。

【映像】事件現場に置かれた大量の花束

 岸田文雄総理も「極めて卑劣な犯行であり、重大かつ深刻な事案」、金杉憲治駐中国大使も「一番知りたいのは日本人が狙われていたのか。日本人学校が狙われていたのか。中国側のしっかりとした説明を求めていきたい」と述べたが、中国外務省の林剣報道官は「個別な案件。類似の事件はどの国でも起こり得る」と発言。ただし、事件から数日経っても、いまだ犯行の動機が明かされていない。中国では、日本人だけでなく他国の人も襲われる事件が相次いでいる。『ABEMA Prime』では、「今の中国は報復社会」と説明する専門家とともに、中国の現状と事件の背景を分析した。

■事件が起きた深センは「中国で最も安全な都市」9位

 日本人男児は両親と登校中、学校から約200メートルの路上で、中国人の男に襲われた。男は過去に2回拘束された経歴があり、容疑を認めている。ただし動機については明かされておらず、なぜこのようなことが起きたのかは未だ不明のままだ。深センは「中国のシリコンバレー」と呼ばれる地域でもあり、トヨタや富士通といった日系企業も進出している。経済特区として飛躍し、人口は約1800万人、邦人も3600人(2023年10月・外務省)いるが、中国大手旅行会社によれば「中国で最も安全な都市 9位」に数えられるという。

 中国の事情に詳しい神田外語大学教授の興梠一郎氏は「ハイテクが集中しているところで、非常に繁栄した都市」と説明するが、「実は2種類の中国人がいる。定職について非常に高収入な人たち、中間層、ホワイトカラー。(もう1種類は)あまり表には見えない部分で、外から入ってきた人たち。この人たちが今の不況でどうなっているかというのが非常に大きな問題、闇の部分」とも語った。中国の不況が事件の引き金となったとも考えられるが、「まず前提として、情報を出して欲しい。反日的な動機があったのか、柳条湖事件の日だからやったのか、固定した収入がないのでむしゃくしゃしてやったのか。」と、情報がほとんど開示されない現状を突いた。

■アメリカ人も襲われる事件「今の中国は『報復社会』」

 犯罪者の動機について、中国政府や現地メディアが、動機を明かさないのは今回だけではなく、むしろ何度も起きている。「実はその前にアメリカ人が4人、大学講師が公園で中国の東北部で刺されている。アメリカ政府も中国側に一体どういう動機なのかと聞くが言わない。去年、同じ広東省で幼稚園を襲撃した事件があった。これはBBCなども報道したが、子どもを3人刺して、幼稚園の中にいた先生か、合計で6人亡くなった。こういったものは報道をしても、動機が分からない」と、類似の事案を示した。

 また、現在の中国には「報復社会」という言葉が踊るという。「『社会に報復する』というキーワードが今、中国にある。中国語は動詞の後ろに目的語がくるから『報復社会』。結婚できない、仕事がない、だから人の家庭をぶっ壊してやろうとか、押さえつけられているから言いたいことも言えないから社会に報復する意味合いがある」。

■反日感情による犯行はミスリード?

 中国内に漂う不平不満が、残酷な事件を起こしたと見る一方、日本人を狙った反日感情ゆえのものと見る動きもある。それはミスリードと懸念されるものでもあるが、興梠氏は「どんな事件も点を繋いで線にするしかない。一連の流れを見ると、ヘイトクライムだとか、日本人を狙ったものではないとかいうことも難しい」と述べる。

 同様に、蘇州でも6月24日、スクールバスの停留所で日本人の母親と未就学男児が襲われ負傷し、バスに乗り込もうとした中国人の52歳の男を制した中国人女性ガイドが刺されて死亡する事件が起きた。「中国人の添乗員の女性が間に入って、体を張って守ったからバス停に立っていた男の子がやられたかもしれない。その前には日本人の男性もそのあたりで、首を軽く切られているので、今回3回目だ。本人の供述が発表されないから断定はできないが、この3つの点はどうなるのか。4回目が起きたらもう遅い。先手を打って、上海とか北京にも日本人学校があるので、情報を中国側がくれないなら、次も起きうると思ってやるしかない」と強い警戒心を示した。

■反日感情の解消方法は「中国共産党が親日的な論調に変えれば一気に雰囲気が変わる」

 反日感情を解消する方法はないのか。興梠氏は「中国は実はシステムが簡単。中国共産党が親日的な論調に変えれば一挙に雰囲気が変わる」と語る。「メディアを完全にコントロールして、今は台湾問題とか米中対立とか、日本がアメリカ側に立って中国にプレッシャーをかけているという論調になっている。全てが、共産党が中国をどうしていくか、対外関係をどうするか、それによって世論が決まる。全ての鍵を握っているのは中国共産党だ。彼らが日本と関係を良くしたい、完全に良くしようと思ったら一挙に変わる」。

 その例として挙げられたのが日中国交正常化のタイミングだったという。「中国人がびっくりした。それまで日の丸は彼らにとって憎む対象だったのに、天安門の前にずらっと日の丸が並んだと。実際に中国の高齢者に聞いたが、びっくりしたと同時に腹が立ったという。日本が友好的な国だと一日で変わってしまったから」。現在は世界各国の大企業が、次々に中国から引き上げる事態も起きている中、習近平氏の決断にも注目すべきと述べていた。
(『ABEMA Prime』より)

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