スリーマイル島原発=米東部ペンシルベニア州で2018年4月18日、AP

 米電力大手コンステレーション・エナジーは20日、1979年に炉心溶融事故を起こし、5年前に採算悪化で閉鎖した米東部のスリーマイル島原子力発電所(ペンシルベニア州)の再稼働計画を発表した。人工知能(AI)で使用するデータセンター向けの電力を求める米IT大手マイクロソフトに、20年にわたり電力を供給することで合意した。

 スリーマイル島原発は74年に運転を開始。事故を逃れた1号機(加圧水型)が2034年までの運転認可を取っていたが、再生可能エネルギーの台頭やガス火力発電との価格競争に押される形で、19年に早期閉鎖した。

 再稼働には、米原子力規制委員会の承認や地元のペンシルベニア州政府などの許可が必要になる。米メディアによると、コンステレーション社は施設の修復などに16億ドル(約2300億円)を投じる。28年の電力供給再開を目指し、少なくとも54年までの運転延長を申請する見通しという。

 マイクロソフトは事業で生じる二酸化炭素(CO2)排出量を30年までに実質マイナスとする「カーボンネガティブ」の達成を掲げる。エネルギー担当のホリス副社長は声明で、合意について「電力網の脱炭素化に取り組む上での重要な節目となる」とした。

スリーマイル島原発=米東部ペンシルベニア州で2011年3月28日、AP

 増大する電力の安定供給と電力システムの脱炭素化の両立は世界的な課題だ。AI向けの高性能サーバーを集めたデータセンターは大量の電力や水を必要とする。国際エネルギー機関(IEA)によると、AI需要の高まりを受けて急増する世界のデータセンターの消費電力は、2年後には2倍になり、日本1国分の消費電力に匹敵すると試算する。

 地元メディアによると、今夏ペンシルベニア州で実施された世論調査では、57%が「増税や電力料金の引き上げにつながらない限り」再稼働を支持すると答えた。一方で根強い反対運動もある。

 スリーマイル島原発2号機は79年、機器の故障や人為ミスが重なって炉心溶融事故を起こした。放射性物質が外部に漏れ、周辺住民14万人以上が避難した。溶けた核燃料の大半は回収されたが、1号機の運転停止を待って廃炉にする計画があり、建屋など主要施設は現在も残っている。【ニューヨーク八田浩輔】

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