バイデン米大統領(左)とトランプ前大統領(AP=共同)

【ワシントン=坂本一之】11月の米大統領選で返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領(77)が、輸入品の関税引き上げや大型減税構想に言及し、産業保護や消費者支援の姿勢をアピールしている。民主党のバイデン大統領(81)も、学生ローンの免除拡大や労働組合を支援する立場を強調。働き手や若年層、家計の支援策を巡って両氏が火花を散らしている。

「米国にとり大惨事だ」

米ドルに対して急落する円相場を巡り、トランプ氏は23日、交流サイト(SNS)でそう批判した。外国通貨に対しドルが高くなれば、米国の輸出品の価格競争力が低下する。トランプ氏は「対抗できなくなる」と危機感を示した。

トランプ氏は2017~21年の1期目に、自国の企業や消費者を最優先にする「米国第一」を掲げた。同氏は今年2月下旬、南部サウスカロライナ州での集会で「外国への関税を引き上げる」と話し、再び米国第一の姿勢を強調した。すでに輸入品に10%の関税をかける構えも示している。

さらにトランプ氏は集会で「労働者や家族に課せられる税金を大幅に引き下げる。みんなが最大の減税を手にする」と言及。大統領に就任すれば、税負担が軽減されると訴えた。

今回の選挙戦では、11月の本選で勝敗を左右する無党派層などの取り込みを意識し、減税の恩恵を一般労働者が得られることを訴えており、中・低所得層を重視する民主党の「お株」を奪おうとしている。

ただ、減税や関税引き上げの詳細は明らかにしていない。関税引き上げに関しては、国の収入拡大となる一方、消費財の価格上昇を引き起こすリスクもあり、慎重な検討が必要となる。

これに対しバイデン氏は2月下旬、新たに約15万3千人の学生ローンを一部免除すると発表した。バイデン政権がローン返済を一部免除した対象は約390万に達する。

バイデン氏は「奇策」も繰り出す。スナックメーカーが、お菓子の価格を値上げしない代わりに内容量を減らす「シュリンクフレーション」について、詐欺だと非難して是正を求めた。

生活が苦しい若年層や子供を持つ世帯に寄り添う姿勢をアピールし、支持獲得を図っている。

バイデン陣営は労組の組織票を重視してきた。バイデン氏は昨年9月、中西部ミシガン州で全米自動車労働組合(UAW)が行ったストライキの会場を現職大統領として初めて訪れ、激励した。今月、南部テネシー州にあるドイツ自動車大手フォルクスワーゲンの工場労働者が労組結成を決めると、バイデン氏は21日にX(旧ツイッター)で「おめでとう」と祝福。待遇改善を求める組合員らを支えていく姿勢を強調した。

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