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 15日、2度目の暗殺未遂事件に巻き込まれたアメリカのトランプ前大統領。17日には事件後、初めて公の場に姿を見せ「大変な経験をした」とコメントしたが、11月5日の大統領選に向けて、精力的に動き続けている。

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 ハリス氏との争いでは、若干リードを許しているという世論調査もあるものの、7つの激戦州のうち4つでは支持率の差が1ポイント未満と拮抗するなど、まだまだどちらに転ぶかわからない状況だ。『ABEMA Prime』では、トランプ氏が前回、大統領となった際に政権移行チームのメンバーとして間近で接してきたアド・マチダ氏を招き、その人柄や大統領に再選を果たした場合の日本におけるメリット・デメリットなどを聞いた。

■元ブレーンが見た労働者層の熱い支援「25分の講演に3時間待ち」

 ハードロック・ジャパンの社長で、トランプ氏の政権移行チームメンバーだったマチダ氏は、安倍晋三元総理、ソフトバンク取締役会長・孫正義氏といった、トランプ氏と親密に直接会話をしたことがある数少ない日本人の一人だ。マチダ氏から見て、トランプ氏が2度も暗殺未遂に遭いながらも大統領再選を目指すモチベーションの一つとして、1期目の4年ではやりきれなかった政策がいくつも残っていることを挙げた。「税制改正、社会保障制度の改正もある。特に移民法に関しても、移民が嫌いだというわけではない。実際、アメリカはもうほとんどの人が移民から生まれている。そういう意味では移民の方々に警戒心があるわけではない。不法的ではなく順序をちゃんとたどって入ってくれば問題ないと言っている」。

 2002年からは当時のチェイニー副大統領の首席補佐官(内政担当)も務めていたマチダ氏は、トランプ氏が前回、大統領選に立候補した2016年の前年、2015年の秋にトランプ氏をサポートすることを考え始めたという。「ホワイトハウスの仕事仲間と飲んだ時、トランプさんに興味があると言ったら、みんなピタッと飲むのを止めて『それはやめた方がいい。彼は自分のPRしか考えていないから』と」。サポートすることがマチダ氏自身の評判を落とすことにもつながると止められた。

 それでも実際にトランプ氏のキャンペーンラリーを見に行った際、「水曜日か木曜日の昼2時くらいだった。その時間帯なら、サポーターたちも背広を着た男性が多いはずだが、周りを見ると家族連れも多いし、Tシャツにジーンズ、ベースボールキャップという人も多かった。講演は25分しかないのに、3時間待ちの人もいたくらい。彼らに聞くと『一番ピンと来たのは、私が思っていることをそのまま彼が大統領候補として言っている。直感的に何か合う』と言っていた」。熱量高く労働者層に支持されるトランプ氏の様子を目の当たりにし、マチダ氏もサポートすることを決めた。

 マチダ氏は大統領候補になる前のトランプ氏と、トランプ氏が所有するゴルフ場やレストランで何度も顔を合わせることがあったという。雑談もする中、真剣に話をしてみると、常に気にかけているのはアメリカの労働者のことだった。「彼が気にかけていたのはアメリカのジョブ。政策に関してアメリカのジョブはどうなるのか。企業なんか関係なく、社員がどう見て、どう影響があるかをしきりに言っていて労働者目線だった。彼はアメリカ国民のために何かしたいという気持ちが非常に強い。1980年代にインタビューで不法移民問題や教育問題、貿易摩擦問題、当時はジャパンインクが悪いと主張していたが、今と言っていることが全く同じ。信念を持ってやっている印象がある」と述べた。

■性的暴行に差別的発言 トランプ氏の人格的な問題は

 トランプ氏には、女性への性的暴行やメキシコ人への差別的な発言が見られ、人格的に大統領にはふさわしくないという声も大きい。また、在任中もフリン大統領補佐官をはじめ、要職についていた側近が次々に辞任、あるいは更迭されて、トランプ氏から去る事態が起こり続けた。反トランプを公言しているパックンも「どんなに好きな候補でも、こういうことをやってしまったら、もう人格的に大統領になってはいけないと僕は判断する。応援どころか協力でも続けたその心境は何だったのか」と疑問を投げかけた。これにマチダ氏は「大統領候補者として完璧な人はいない。もちろん彼がした女性に対しての発言は言わないべきことであって、反省すべきであると思う」とした。さらに「私がよく言うのは、その最初の1期目で、ホワイトハウスないしトランプ政権が成し遂げてきたことだけを見れば、人格は別として彼は良い大統領であった」とも語った。

 労働者のことを思い、経営するゴルフ場の従業員には気さくに声をかけ、その家族のことまで気にかけるという人情家の部分と、諸々の問題を起こす人格を併せ持つトランプ氏。果たして再び大統領になったとしたら、日本にとってどんな影響があるのか。日米首脳の関係として必ず話題となるのは、安倍晋三元総理との関係だ。「4年間やった時は幸い、安倍総理との関係が非常にうまくいっていて、個人的にお互いを頼っていた。一番すごいなと思ったのは、トランプが初めてG7サミットに行った時。大統領として、G7のリーダーとして何を期待すべきなのかわからず、一番に電話したのが安倍総理だった。誰を信用すべきなのか、誰と話すべきなのか。アメリカの大統領が日本の総理にアドバイスを求めた」。

 またトランプ氏の人との接し方については「会った時に、この人はフランクなのか、真実を語っているのかですぐ決め付けると思う。だから一番難しいのは、話している時に『僕がこうやって言えば、相手はこう出てくるだろうな』と計算しているのが見えると一番困る」とも指摘した。各国の首脳は、それぞれの思惑を持って交渉に臨むが、そこに計算高さを感じられるとトランプ氏は反発する。ただし、懐に入ってしまえば“ファミリー”として抱きかかえる。マチダ氏から見える人物像は、こういったものだ。

■トランプ氏が再選したら日本は損する?得する?

 パックンは「安倍さんのトランプ使いは、僕は世界一だと思うし大事だと思う。ただ僕はそうしなきゃいけない段階で問題かなと思う。共和党大統領が民主党大統領の功績をぶっ壊す傾向が過去に何回もあり、トランプはTPPから離脱を決めて、日本の顔に泥を塗った。アメリカは日本がもっとお金を払わないと、米軍撤退させるかのように振る舞うなど、日米同盟に亀裂でもあるのかと思わせた。トランプとは確かに関係は良かったが、関係をよくしなきゃいけないと思ってしまう段階でダメだし、結局日本はいろいろ損をした」と、当時のトランプ政権で被った日本のデメリットを指摘。これにマチダ氏は「あまり損していない。アメリカで政権交代があると、前の民主党の大統領ないし政権が行ったことは、共和党の大統領政権がそれを裏返す。今回もトランプさんがやったことをバイデン政権が裏返した」と反論していた。

 大統領選まで2カ月を切ったが、既に支持を決めている人々の動向はこれからもさほど変わらない。マチダ氏も「大統領選挙はだいたい10月にならないと一般の国民、有権者の方々は真剣にならない」という。ポイントはやはり無党派層。現在はハリス氏がややリードと伝えられる中、前回当選時と同様に“隠れトランプ”の存在も十分に考えられる。投開票は11月5日に行われる。
(『ABEMA Prime』より)

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