通信機器爆弾攻撃の2日目、爆発が起こったビルを見上げるベイルート市民(9月18日、レバノン南部のベイルート郊外) Social Media/via REUTERS

<一度に3000人の死傷者を出したポケベル爆弾攻撃の翌日、今度はヒズボラ戦闘員のトランシーバーを狙った同時爆発攻撃が。イスラエルの対ヒズボラ戦略が変わった可能性も>

レバノンの首都ベイルートで9月18日、イスラム過激派組織ヒズボラの戦闘員が使用していた無線通信機器が再び爆発。同国保健省によれば、20人が死亡し、少なくとも450人が負傷した。

【動画】「ポケットの中の爆弾」が一斉に爆発した瞬間

前日の17日にもレバノンと隣国シリアで同じような爆発があり、子ども2人を含む12人が死亡し、3000人近くが負傷した。17日の事件で爆発したのはポケットベルだったが、18日に爆発したのはトランシーバーのような機器だった。

ヒズボラが運営するテレビ局「アルマナル」によると、イスラエルと国境を接するレバノン国内の複数の地域で爆発があったと、AP通信は伝えた。AP通信のカメラマンは、爆発で車1台と携帯電話の販売店が損傷を受けたのを見たと報じた。

ある治安筋は米CNNに対して、ベイルート郊外で15回から20回の爆発、さらにレバノン南部でも15回の爆発があったようだと語った。

英スカイニュースのアラビア語サービスによれば、今回爆発したトランシーバーも17日に爆発したポケベルも、ヒズボラが同時期に購入したものだという。

「何百回もの爆発」

ある目撃者(安全上の理由から匿名扱い)はCNNに対して、現地時間の午後3時頃にトランシーバーが爆発したと語った。大きな爆発音がした後に叫び声が上がり、爆発したトランシーバーを所持していた男性が血まみれになっていたという。

さらに民家や食料品店、カフェなどで「何百回もの爆発」が起き、多くの場合は近くに民間人がいる状況だったと、AP通信は伝えた。

この破壊規模に、国際社会から懸念の声が上がっている。フォルカー・トゥルク国連人権高等弁務官は爆発について独立調査を行うよう求め、「民間人に大きな恐怖と戦慄をもたらした」と、一連の攻撃を非難した。

イランの支援を受けるヒズボラとイスラエルは10月初旬以降、毎日のように国境を挟んだ衝突を繰り広げている。パレスチナ自治区のガザでは、2023年10月にガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエル南部を襲撃したのをきっかけに戦闘が続いている。ヒズボラはイスラエルへの攻撃はハマスとの連帯を示すものだと宣言している。

イスラエルの指導部はこの数週間、ヒズボラに対する作戦を強化する可能性があると警告。ヒズボラのロケット弾攻撃を避けて国境付近から避難している6万人のイスラエル人が自宅に帰れるようにするために、あるイスラエル当局者(匿名)はAP通信に対して、イスラエルはレバノンとの国境地帯に追加の部隊を配置し始めたと述べた。

17日にポケベルが爆発した事件については新たな詳細が明らかになりつつある。匿名を条件にAP通信の取材に応じたアメリカの当局者によれば、事件後にイスラエルがアメリカに対して、ポケベルの中に少量の爆薬が仕込んでいたことを報告したという。

一連の攻撃には高度な技術が使われていることに警戒感が強まっていると、AP通信は報じる。17日の攻撃で爆発したポケベルは台湾企業「ゴールドアポロ」のAR-924モデルと特定されているが、AP通信は同社の声明を引用し、製造はゴールドアポロからライセンス供与を受けたハンガリーの企業「BACコンサルティング」が行っていると伝えた。

ゴールドアポロの会長である許清光は18日に記者団に対して、ゴールドアポロは過去3年にわたってBACとライセンス契約を結んでいるが「製品の製造と設計はBACの責任において行われて」おり、同社は一切関与していないと述べた。


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