台湾の総統府=台北市中正区で2020年2月2日、福岡静哉撮影

 モーターボートで台湾北部の河口に侵入したとして出入国・移民法違反の罪に問われた元中国軍人の男(60)に対し、台湾の士林地方法院(地裁)は18日、懲役8月の実刑判決を言い渡した。男は公判で、自分の携帯電話に共産党に批判的な情報があったとして中国警察当局に摘発されたのをきっかけに、「中国には人としての尊厳がない」と考えて密航したと証言した。

 判決などによると、男は6月8日に台湾の対岸・福建省寧徳市の港で購入したモーターボートに乗り込み、9日に台湾北部・新北市の淡水河河口に侵入。渡し船に衝突後、警備当局に逮捕された。検察が解析した男の携帯電話のデータと男の供述が一致したという。

 男は元中国海軍の艇長。公判で中国では習近平国家主席への忠義を欠くことは許されず、習氏の思想を学習させることで洗脳が進んでいると述べた。

 淡水河河口は台北市の総統府まで直線距離で約20キロ。台北ののど元にあたる場所に中国船の侵入を許したことで警備態勢に批判が高まり、関係者10人が処分を受けた。【台北・林哲平】

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