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 アメリカ大統領候補によるテレビ討論会が10日(日本時間11日)、米フィラデルフィアにて行われ、民主党のカマラ・ハリス副大統領と共和党のドナルド・トランプ前大統領が初対決に臨んだ。

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 両氏による初のテレビ討論会を専門家はどう見たのか。アメリカ現代政治外交が専門の前嶋和弘教授は、「お互いがお互いの支持層向けに話すのみで、全く噛み合っていなかった」と評価した。

 「討論会というのは政策について“議論する”場であるのに、それぞれの支持層向けに話している。例えば経済だったらトランプ前大統領は減税や規制緩和を主張するが、ハリス副大統領は格差を是正して経済成長すべきと語るのみ。移民の話題や中国の話題でも同様で、それぞれがただ“覚えてきたこと”を話すだけだった」

 そんな噛み合わない討論会だったが、それぞれの陣営について振り返ってみると、ハリス副大統領の立ち回りについて前嶋教授は「トランプ前大統領の討論会の答弁に対する準備がかなり上手かった」と分析する。

 「そもそもハリス氏は副大統領を務めたこの3年8カ月、(メディアへの)露出が少なかったため、『しっかり話せるのか』『トランプ前大統領の無茶苦茶な答弁に対してしどろもどろにならないだろうか』と懸念され、期待値が低かった。それが今回の答弁で『意外とうまくやっている』という印象を与え、20年のバイデン、16年のヒラリー・クリントンの両氏よりも(答弁を)うまくやったと、民主党支持者も満足しているのではないか」

 ハリス副大統領はトランプ前大統領による「She is Biden(お前はバイデン大統領と一緒だ)」という暴言に対しても、「私はバイデンではないし、あなた(トランプ前大統領)でもない」と返答。トランプ氏の土俵で戦わず、アドリブに対してもまるでアドリブではないような切り返しができていたという。

 一方のトランプ前大統領は、支持者向けの演説と放言のスタイルは「いつものトランプ前大統領」という調子だったものの、「マイクオフ(自身が喋っていない)の間、苦虫を噛み潰したような嫌な顔をしている時間が多かった」と前嶋教授は指摘する。

 「昔のトランプ前大統領であれば相手が話している時間でも常に暴言を浴びせるように言い返していたが、今回はそれができていなかった。(最初に立候補してから)8年という歳月が経ち、当時は自由闊達で元気そうに見えたトランプ前大統領からキレが無くなっていた。年齢は残酷だ」

 とはいえ、政策を議論していない討論会で「どちらが勝ったとは言えない」とも話す前嶋教授。支持率も過去もっとも拮抗していると言われており、今後は無党派層の支持獲得がカギとなる。

 前嶋教授は、アメリカ大統領選の特徴として「アメリカの無党派層は“中間層”ではなく、うっすら党派性がある。それらの人々に投票に行ってもらうことができるかが重要だ」と指摘。

 では、そういった人々をどう動かすか。前嶋教授は「11日の討論会は両陣営にとって満足度の高いものだった。今後は投票行動をさらに後押しするため、特に(支持率が拮抗している)激戦州を中心にSNSの投稿や年収分布、クレジットの購買データなどさまざまなデータ分析を行なって潜在的な支持者を掘り起こす『マイクロターゲティング』という手法を用いた選挙活動が展開されるだろう」と予測。加えて、その分析を根拠とした、有権者に対する戸別訪問といった“ドブ板営業”のような活動によって、ギリギリまで投票率アップを狙うことになるだろうと語った。

(『ABEMAヒルズ』より)

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