ユニークな研究に贈られるノーベル賞のパロディー版「イグ・ノーベル賞」が発表されました。今年は「お尻で呼吸ができる」ことを発見した日本人研究者らが受賞しました。

 12日、東京医科歯科大学の武部貴則教授らの研究グループに「多くの哺乳類がお尻から呼吸ができる」ことを発見したとして「イグ・ノーベル生理学賞」が贈られました。

 武部教授らはドジョウなどの一部の生物が肛門を通して腸内から酸素を取り込んでいることに注目し、研究を進めました。

 当初、酸素ガスを直接哺乳類の腸内へ注入する方法を試しましたが、酸素の吸収量が少ないことや腸が破裂するリスクがあり、別のアプローチを取る必要があったということです。

 また、全く新しい研究分野だったため、武部教授らの活動を支援する環境が整っていなかったことや資金面での課題もありました。

 しかし、新型コロナの流行により、患者の呼吸を補助する従来の方法では救えない命があるという認識が広まり、結果的に研究への追い風となったといいます。

 その後、武部教授らは酸素ガスではなく酸素を多く含む特殊な液体を使用する方法をとり、呼吸不全の哺乳類の症状が改善することを明らかにしました。

 武部教授らの「腸換気法」は、完全に肺の機能が失われた患者の「肺呼吸」を代替するものではありませんが、人体の治療に応用した場合、従来の人工呼吸器やECMO(人工心肺装置)を使った治療に比べて体への負担を軽減できることが見込まれるということです。

 人体での臨床試験もすでに始まっているということで、「腸換気法」を利用した治療は2028年ごろにも国内で実現する可能性があります。

 今回の受賞でイグ・ノーベル賞を日本人が受賞したのは18年連続となりました。

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