米ホワイトハウスでウクライナ支援などについて演説するバイデン大統領=2024年4月24日、AP

 バイデン米大統領は24日、ウクライナやイスラエル、台湾への軍事支援を盛り込んだ総額953億ドル(約14兆7700億円)の緊急予算案に署名し、予算が成立した。バイデン政権は予算成立直後、約10億ドル(約1550億円)規模のウクライナへの追加支援を発表。サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は長射程地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」の最大射程(約300キロ)を発揮できるタイプの供与を始めたと明らかにした。

 バイデン氏は24日の予算成立後に演説し、「過去数カ月間、ウクライナは砲弾や弾薬が不足してきた。一方、ロシアはイランから無人航空機(ドローン)、北朝鮮から弾道ミサイル、中国から軍需品生産に使える部品を豊富に供給されてきた。米国はこれからウクライナが戦い続けるために必要なものを送っていく」と強調した。

 ロシアのウクライナ侵攻については「プーチン(露大統領)がウクライナで勝利すれば、次に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国を直接攻撃する可能性が高い。もしそうなれば、米国は支援に駆けつける以外に選択肢はない」と述べた。

米軍の長射程地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」=2021年12月、AP

 サリバン氏は24日の記者会見で、米国の支援再開で「ウクライナは戦闘での優位性を保ち、ロシアに勝ることが可能になる」と強調。バイデン氏が2月にATACMSの射程制限の解除を指示し、既に射程の長いタイプがウクライナ側に引き渡されていると説明した。米紙ニューヨーク・タイムズによると、米国は100発以上の供与を決定。ロシアが実効支配するウクライナ南部クリミア半島や南東部で17日以降、露軍拠点に対する攻撃に使用されたという。

 米国はロシア領への攻撃に反対しており、従来は長射程タイプの供与には慎重だったが、戦況がロシア優位に傾く中で方針を転換したとみられる。サリバン氏は「米軍のATACMSが減れば、即応性に問題が生じる恐れがあったが、ミサイルの在庫が十分になり、懸念は解消された。(ロシアの実効支配地域を含む)ウクライナの主権が及ぶ範囲で使用される」と説明した。

 今回成立した緊急予算のうち、ウクライナ支援は608億ドルで、長射程のATACMSの供与も含まれる。24日に発表された約10億ドルの追加支援には、高機動ロケット砲システム(HIMARS)用の砲弾、155ミリ砲弾、戦闘車両、対戦車ミサイル「ジャベリン」などが盛り込まれた。

 米シンクタンク「外交問題評議会」によると、米国は2022年1月以降、計463億ドルの軍事支援を表明してきた。しかし、23年末に予算が底をつき、新規の支援は停滞していた。【ワシントン秋山信一】

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