都市部と地方の間には大学の収容力で大きな差ができている Fine Graphics/photo-ac

<全国の大学入学者の約4割が首都圏の大学に入学しているのが現実で、地方から都市への若年層流出の原因になっている>

大学が地域的に偏在しているのはよく知られている。具体的に言うと、都市部への偏在だ。2023年春の4年制大学入学者は63万2902人だが、うち26万182人(41.1%)が首都圏(1都3県)の大学に入っている。

東京都内の大学への入学者は15万7086人。東京だけで、全入学者の4分の1が占められていることになる。大学の都市集中はすさまじい。裏返すと地方には大学が少ないわけで、大学教育機会の地域格差や、地方から都市への若年層流出の原因となっている。

地域に大学教育の機会がどれほどあるかを可視化する指標として、大学収容力がある。18歳人口100人に対し、大学入学枠がいくつあるかだ。18歳人口は、3年前の中学校・義務教育学校・中等教育学校前期課程卒業者数で表せる。大学入学枠は、地域内の大学への入学者数で代替できる。この2つを都道府県別に集め、各県の大学収容力を算出すると<表1>のようになる。


18歳人口より大学入学枠が多い京都と東京では100%を超える。18歳人口全員が座っても、まだイスが有り余る。大阪は75%で、4人に3個のイスが用意されている。対して地方では値が低く、筆者の郷里の鹿児島では4人に1個、最も低い三重では5人に1個しかない。

大学収容力が高い地域では、自宅から大学に通うことが容易だ。また大学生を目にする機会も多く、大学がどういう所か、何をする所かを具体的にイメージでき、高校卒業後の進路の選択肢として大学進学が入ってきやすい。地方はその反対だ。

当然ながら、各県の大学収容力<表1>は大学進学率と強く相関している。<図1>は、この2つの相関図だ。大学進学率は、18歳人口ベースの浪人込みの進学率をさす。計算方法の詳細は、別記事を参照されたい(「大学進学率50%のウラにある男女差と地域格差」本サイト、2024年1月10日)。


傾向は右上がりで、大学収容力が高い県ほど大学進学率が高い。各県の大学進学率は、県民所得や親世代の大卒率よりも、大学収容力と強く相関している。大学進学チャンスの地域格差の要因として、大学の地域的偏在は大きいようだ。

各県の大学収容力と大学進学率を男女別に計算し、相関係数を出すと、男子では+0.6941、女子では+0.7918となる。女子の場合、自宅通学の可否が考慮されることが多いためだろう。

大学の地方分散が求められるは明らかだが、一朝一夕にそれを進めるのは難しい。教育の機会均等の観点からなすべきは、大学に自宅外通学をする学生への経済的支援だ。地方ではただでさえ所得水準が低いのに、学費と下宿費のダブルの負担を課されるのだからたまらない。このため、下宿学生の家賃補助をする大学も出てきている。

地方は大卒学生のUターン促進を

地方創生の兼ね合いでは、都会で大学教育を受けた学生のUターン(Iターン)を促す施策が求められる。地元に戻ったら返済を免除する奨学金を創設してもいいし、増加している空き家を活用した「住」の支援を行うのもいい。今後、IT化によりテレワークが増え、東京の会社に籍を置きつつ、物価の安い地方に居住することを望む人も多くなる。地方にとっては、都市部の高度人材を呼び込むチャンスとなる。

最後に、いま議論されている国立大学の学費値上げとの関連で一言する。地方では大学入学枠が少ないのだが、その大半は国公立で賄われている。県内大学入学者の国公立割合をとると、私大がない島根では100%だし、秋田、富山、鳥取、高知でも9割を超える。このほかにも、地方では自県の大学入学枠の6~7割が国公立という県が多い。

地方の国公立大学は、地元の(低所得層の)子弟に安価で高等教育の機会を提供する機能を果たしている。学費を3倍に爆上げしたらこれが損なわれ、大学教育機会の地域格差がますます開くことになる。

<資料:文科省『学校基本調査』>


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