20日、米首都ワシントンの米連邦議会前で、ウクライナ支援の緊急予算案が下院で可決したことを祝うウクライナ支持者 (ゲッティ=共同)

【ワシントン=渡辺浩生】米上院は23日、ロシアの侵略が続くウクライナ向けに約600億ドル(約9兆3000億円)の支援を盛り込んだ緊急予算を超党派の賛成で可決した。バイデン米大統領が近く署名し、同予算は成立する。バイデン政権は停滞した軍事支援を速やかに再開し、戦場で不足する武器弾薬の補充や、露軍の空爆で消耗した防空システムの強化を急ぐ考えだ。

約半年の審議停滞を経て野党共和党が多数派の下院が20日、ウクライナ、イスラエル、インド太平洋地域向けの3本立てにした予算案を超党派で可決していた。上院(定数100)はそれらを一括して採決し賛成79、反対18で可決した。

3カ国・地域で支援総額は950億ドル(約14兆6300億円)に上る。ウクライナのほか、イランと親イラン勢力の攻勢を受けるイスラエル、統一を狙う中国の威圧が強まる台湾への支援などが盛り込まれ、現状変更勢力と対峙する米国の指導力を打ち出した形だ。

民主党上院トップのシューマー院内総務は「上院は世界全体に統一のメッセージを送る。米国は民主主義が危機にひんしたときに必ず守る」と訴えた。

米メディアによると、政権は緊急予算を財源に、ウクライナに約10億ドル(約1540億円)の追加軍事支援を検討している。携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」や155ミリ榴弾砲の砲弾などを供与する見込み。

一方、緊急予算は政権に対しウクライナ支援の戦略を45日以内に議会に提出するよう定め、ウクライナが米国に求めてきた長射程地対地ミサイル「ATACMS(エイタクムス)」の供与も明記した。

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