歓迎式典で、モンゴルのフレルスフ大統領(左)と並んで歩くロシアのプーチン大統領=ウランバートルで2024年9月3日、スプートニク通信・ロイター

 ロシアのプーチン大統領は3日、訪問先のモンゴルでフレルスフ大統領と会談した。プーチン氏が昨年3月に国際刑事裁判所(ICC)からウクライナ侵攻に関連する戦争犯罪の疑いで逮捕状を発行されて以降、ICC加盟国を訪問するのは初めて。モンゴルにはプーチン氏を逮捕する義務があるが、両国は事前に不逮捕で合意したとみられ、他の加盟国から批判の声が上がりそうだ。

 モンゴルの国営通信社は3日、プーチン氏が2日深夜に、首都ウランバートルに到着して歓迎を受ける様子を伝えた。だが、ICCの逮捕義務については報じていない。

 プーチン氏は3日、フレルスフ氏やオユーンエルデネ首相らと会談し、両国間の協力に関する文書に署名する予定だ。1939年に旧日本軍と旧ソ連軍が衝突したノモンハン事件の85周年記念式典にも出席する。欧米と共にウクライナを支援する日本をけん制する狙いもあるとみられる。

 中国とロシアに挟まれたモンゴルは90年代に民主化されるまで、隣接するソ連の強い影響下にあった。現在も、ソ連の継承国であるロシアが石油などエネルギー面での主たる供給元で、友好関係にある。そのため、モンゴルはロシアに配慮してウクライナ侵攻を非難せず、国連総会での非難決議は棄権している。

 モンゴルは自国の対中依存深化への懸念を抱える。2023年の対中輸出は前年比3割増となり、輸出総額の9割以上を占めた。対露関係の維持・強化でバランスを取りたい思惑があるとみられる。

 ただ、今回、モンゴルがICC加盟国としての逮捕義務を履行せず、プーチン氏を賓客として迎え入れたことで、国際社会からの風当たりが強まるのは必至だ。モンゴルは中露だけではなく、日本や欧米などとの関係強化も進める全方位外交を目指してきたが、これに水を差す可能性がありそうだ。

 ウクライナ外務省の報道官は2日、「モンゴルがプーチン氏を逮捕しなかったことは、ICCにとって大きな打撃だ」とX(ツイッター)に投稿した。【北京・岡崎英遠】

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