パリオリンピックの卓球混合ダブルスで銀メダルを獲得した北朝鮮代表の選手たち。

待っていたのは、思想検閲による処罰の可能性でした。

一体何があったのでしょうか。

北朝鮮が問題視したとみられるのが表彰台でのシーン。
北朝鮮の選手2人は銅メダルの韓国選手に声を掛けられ、金メダルの中国選手と共に写真に納まります。
こわばった表情を見せたあと苦笑いをしたリ・ジョンシク選手(24)、一方、キム・クムヨン選手(23)は笑顔を見せていました。

海外では、韓国と北朝鮮の選手が並んだこの場面を“団結の瞬間”と称賛し、パリ五輪の10大ニュースの1つと報じました。

しかし、この象徴的な場面を北朝鮮は問題視します。
どこが問題だったのでしょうか。

龍谷大学・李相哲教授:
北朝鮮は韓国を敵と見なしている。親しくしてはならないという指示は絶対にある。これは北朝鮮に戻ったら全部問題になる。

また、北朝鮮専門メディアの「デイリーNK」は、金正恩(キム・ジョンウン)総書記がトップの朝鮮労働党に、「一番の敵対国・韓国の選手がそばにいるのにニヤニヤした姿を見せた」などと選手を批判する報告書が提出されたと伝えています。

称賛から一転して、処罰の対象となった代表選手。

専門家が指摘するのは、五輪選手への北朝鮮の常識を超えた対応です。

龍谷大学・李相哲教授:
外国を訪問して戻ると、必ず“思想検閲”統括をしなければならない。

選手たちを待ち受けているのが“思想検閲”などと呼ばれる思想の調査です。

2018年の平昌(ピョンチャン)オリンピックで話題となった美女応援団も受けたという思想調査。

それは3段階に分かれ、選手たちに対して約1カ月にわたり行われるといいます。

第1段階では、出発から戻るまでの過程で、選手たちに問題行動がなかったかをチェック。

出発前には、韓国を含む外国の選手と接触するなと指示し、リ選手とキム選手の行為はこれに違反するといいます。

第2段階では、大会での成績を評価します。

そして、最終段階で行われるのが思想検閲。

それは、いわば公開反省会のようなものだといいます。

龍谷大学・李相哲教授:
思想検討会というふうに、集まって(選手が)お互いを批判したり、突出した行動を見せた人。写真を一緒に撮った選手たちは、みんなの前で自己批判をしなければならない。「私たちは思想的に韓国に対する警戒心が弱かった」と反省する。

大会期間中の自身の誤った行動について、自ら批判する他、選手同士で問題ある言動を批判し合い、公の場で反省することが“思想検閲”だといいます。

龍谷大学・李相哲教授:
外国に出ると、いろんなことを見たり聞いたりする。それを頭から洗ってなくすのが思想教育になる。

海外では“団結の瞬間”と報じられた場面も、北朝鮮では処罰の対象に。
2人の選手には、どのような処罰が待ち受けているのでしょうか。

龍谷大学・李相哲教授:
3カ月、労働現場で仕事しなさいとか、労働教化刑(懲役に相当)を科す可能性も。

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