福島第一原発の処理水放出から、24日で1年。中国の禁輸措置で大打撃を受けた日本産のホタテですが、そのいまを取材すると、逆境をはねのけ、世界各地で存在感を増している実態が見えてきました。(8月24日OA「サタデーステーション」)
■”脱中国”で輸出量はV字回復
世界一の寿司職人を決めるコンテスト。そこで注目の海産物を聞くと…
ポーランドの寿司職人
「私のレストランの人気料理は、ホタテを使っているものです。ホタテは最高だよ」
世界一となったフランスの寿司職人
「少し炙って味噌で味付けするんだ。すごい人気だよ」
世界を魅了する日本のホタテ。しかし、一年前…
中国外務省 汪文斌副報道局長(去年8月)
「日本政府は福島原発事故による汚染水の海洋放出を強引に開始した。 本日、日本産水産物の輸入全面停止を通達する」
今も続く、中国政府による禁輸措置。大きなダメージを受けたのは、中国への輸出依存度が高かった「ホタテ貝」に携わる漁業関係者たちです。
いま北海道のオホーツク沿岸では、そのホタテ漁が最盛期を迎えています。オホーツクのホタテ貝は、肉厚で、濃厚な甘みが特徴です。
水産会社「丸ウロコ三和水産」では1年前、突然、中国向けの輸出がゼロとなり、在庫が倉庫を埋め尽くしたといいます。
丸ウロコ三和水産 山崎和也社長
「(Q禁輸直後はいっぱい余っていた?)もう(倉庫が)パンパンでした。そしてそれが一年経って、今シーズンに入る前に在庫はなくなったんです」
会社では、新たな販路の開拓を続け、今では禁輸前のレベルまで回復してきました。実際の統計でも、日本のホタテの輸出量はまさにV字回復していることが分かります。
■販路開拓で世界を魅了
サタデーステーションは日本産ホタテを追跡しました。まず向かったのは、タイの首都バンコク。
バンコクにある市場の店員
「普通に焼くのもいいし、バターかチーズを追加でもいい。全部で12個で400バーツ(約1700円)です」
高級スーパーでは、北海道産ホタテの特設コーナーが設けられていました。
ホタテを購入した客
「今日は友達とBBQするから買いにきました。新鮮なホタテが入ってきたら、また買いに来たいです」
さらにレストランでは。
レストランのシェフ
「(Q一番おすすめのメニューは?)ホタテサラダです。日本から輸入したホタテとタイの醤油で、両国がうまくミックスした味となっています」
ジェトロによると、日本産ホタテ貝のタイへの輸出額は、前年同期比でおよそ3.5倍に増えました。
そして、日本産ホタテはこんなところにも…。サンフランシスコの人気ラーメン店「HINODEYA」。
数量限定で1杯およそ4000円と高価ですが、地元の人や観光客に人気です。日本産ホタテのアメリカへの輸出額は前年同月比で6割以上増えています。
そして、東ヨーロッパのハンガリーでは、意外な反応が…。
ハンガリーの卸売業者
「ホタテは何か得体の知れないもので、ハンガリー人は怖がっています。しかし食べた人の多くは、ホタテの甘さに強い感銘を受けています」
世界にマーケットを広げることで、ピンチをチャンスに変えつつある日本のホタテ。一方で、中国による日本の海産物に対する輸入再開のめどは立っていません。
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高島彩キャスター
「海産物の新たな販路拡大も進んでいますが、改めて安全性に関して見ていきます」
板倉朋希アナウンサー
「処理水放出の影響に関しては、東京電力をはじめ環境省や原子力規制委員会、福島県などが定期的にモニタリングを行っていまして、トリチウムについて、例えば東京電力では、先月の測定結果の最大値が1リットルあたり21ベクレルということで、これはWHOが飲料水の水質ガイドラインで定める1万ベクレルを大きく下回っている状況で、人や環境への影響はない数値だということです」
高島彩キャスター
「影響はないレベルの数値ということですが、福島県での風評被害についてはどうなんでしょうか?」
板倉朋希アナウンサー
「まず福島に水揚げされる“常磐もの”と呼ばれる水産物については、福島漁連によると処理水の放出の影響はないということです。逆に安全性のPRや“常磐もの”というブランド化もあって、売り上げが上がっているということなんです。また海水浴場や宿泊施設に関しましても、処理水放出を懸念するような声は上がっていないということでした。ただ風評被害に対する補償の請求がなかったわけではありません。処理水放出による損害を補償する東京電力によると、賠償請求件数がおよそ570件。支払い件数はこのうちおよそ190件。支払金額はおよそ320億円となっています」
高島彩キャスター
「補償を受けるには、事業者側が損害を立証しなければならないということで、そのあたりは課題かと思いますが、柳澤さんどうご覧になりますか?」
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏
「支払い件数は、請求件数の半分以下ですから、やはり納得のいく迅速な手続きというものが求められると思います。また、放出が始まった直後、中国から嫌がらせの電話が殺到しましたが、あれが逆に国内で「頑張れ」という応援ムードを盛り上げてくれたということになってきてますよね。とはいえ、新たな安定した市場の開拓ということは急務だと思います。それと日中両国間で、さまざまなレベルでの対話、意思疎通を進めることによって信頼醸成をつくっていくということも大切かもしれませんね」
高島彩キャスター
「中国だけに頼るのではなくて、新たな販路も見つかってきていますし、長い目で見た場合、そうやっていろいろな道を探っていったほうがいいわけですからね」
ジャーナリスト 柳澤秀夫氏
「『チャンスを活かして』を次に繋ぐということをよく言われますが、まさに今回もそんな気がしますね」
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