消滅から300年後の真実(写真はイメージです) McGill Library-Unsplash

<実は素早かった? ドードーの歴史的誤解に終止符を打つ研究が発表された>

300年以上前に絶滅した鳥「ドードー」の歴史について、研究者が記録を正そうとしている。

研究チームはリンネ協会動物学誌に発表した論文で、ドードーの分類と、ドードーに最も近い仲間でやはり絶滅したロドリゲスドードーの分類について包括的な検証を行った。

「ドードーは、保全生物学の代表的象徴とはいわないまでも、ひとつの象徴だ。消滅と記録された動物はこれが初めてだった」。論文を監修したイギリス・サウサンプトン大学のニール・ゴスリングは本誌にそう語った。

「それまでは、神の創造に対して人類がこのような形で影響を及ぼし得るとは考えられていなかった」。ゴスリングはプレスリリースでそう述べている。「これは我々が種の分類の拠り所としている科学的原則やシステムが出来上がる前の時代だった。ドードーもロドリゲスドードーも、我々が見たものを理解できるようになる前に、姿を消した」

生態と行動を研究

ゴスリングのチームは、絶滅した鳥類の生態と行動を調べる一大プロジェクトに取りかかろうとしている。

「ドードーはその中心になる。広範な記録がある有数の種でありながら、生態や行動についてはほとんど分かっていないためだ。近縁種の流れの中でドードーについて論じるためには、近縁関係と分類の枠組みが確かであることを確認する必要がある。それには最も近い近縁種のロドリゲスドードーも含まれる」。本誌の取材にゴスリングはそう解説している。

ただし問題があった。ドードーもロドリゲスドードーも、生物学の分類法や命名法に関する科学的ルールが正式に確立される前に絶滅していた。

「実際に19世紀半ばごろには、ドードーそのものが神話だったと考える人もいた」とゴスリングは言う。

ドードーとロドリゲスドードーは、それぞれインド洋のモーリシャス島とロドリゲス島に生息していた飛べない鳥で、残っている記録の大半は、(時として不確かな)オランダ人の船乗りの証言や芸術作品、不完全な骨格に基づく。

今回の研究の目標はドードーとロドリゲスドードーに関する400年分の科学文献を「整理」して、次のプロジェクトの基礎を固めることだった。同プロジェクトを通じ、かつての生息地だったモーリシャス島の生態系にドードーが果たした役割を解明したい意向だ。

「文献をあたって(ドードーに)言及している箇所を全て参照し、どう分類されていたかを調べた。明白なことや、我々が知っていることもあったが、命名に関する正式なルールが確立される前に命名されていたことから、博物館には命名に関連する標本が存在しない」とゴスリングは続ける。

「そこで我々は過去400年間の分類を整理して、存在していた分類群と存在していなかった分類群をはっきりさせた」

存在していなかった種も発覚

その結果、過去に命名されながら実は存在していなかった種を確認した。分類に誤りがあったのはナザレドードー(Nazarene Dodo)、シロドードー、シロソリティア(White Solitaire)など。ドードーとロドリゲスドードーがハトの仲間だったことも、この調査で分かった。

文献調査に加えて、論文筆頭著者でサウザンプトン大学のマーク・ヤングは、イギリス各地のコレクションを訪ねたり連絡を取ったりしながら標本をたどっていった。その多くは時の経過とともに失われつつある。

研究チームはドードーとロドリゲスドードーを合わせた新しい分類名「†Raphina subtribus nova」を創設した。

同チームが始動するプロジェクトでは、ドードーの生態と行動に関してさらなるデータを掘り起こしながら、「大切なメッセージ」を伝えたい意向だ。ドードーは太った動きの鈍い鳥、という従来のイメージは誤解だとゴスリングは力説する。

実は素早く敏捷

「太って頭が悪かったわけでも、絶滅する運命にあったわけでもない。航海日誌には、素早く敏捷で、森の中や岩の間を『運動選手のように』動くことができたと記されている」

「絶滅しても仕方がない動物などいない。(ドードーとロドリゲスドードーは)ネズミやブタ、ネコ、ヤギとは合わなかった。そうした動物に卵やヒナを食べられ、巣を踏みつぶされた。我々が『消滅』、つまり絶滅を記録した最初の動物から学ぶべき教訓は、我々人間が今も行く先々で慎重に歩を進める必要があるということだ」

「我々の行動は、生態系をあっという間に破壊できる。ドードーは2500万年間、モーリシャス島で生きていた。だがロドリゲスドードーとともに、人間と出会って100年足らずで姿を消した」

(翻訳:鈴木聖子)

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