8月22日まで開催されている米民主党全国大会では、人気SNSで活躍するインフルエンサーが取材を認められた上で作業スペースも優遇されるなど、新聞やテレビといった既存メディアの記者と存在感を競っている。写真は会場で写真を撮るインフルエンサー。シカゴで19日撮影(2024年 ロイター/Cheney Orr)

22日まで開催されている米民主党全国大会では、ユーチューブやTikTok(ティックトック)、インスタグラムなど人気SNS(交流サイト)で活躍するインフルエンサーが取材を認められた上で作業スペースも優遇されるなど、新聞やテレビといった既存メディアの記者と存在感を競っている。

大会はイリノイ州シカゴのアリーナ「ユナイテッドセンター」で4日間にわたり開かれ、200人以上の「コンテンツクリエーター」が参加を許可された。若年層を中心に多数のフォロワーを持つインフルエンサーの影響力を取り込んだ民主党大会は初となる。


 

インフルエンサーを含むクリエーターには会場内にラウンジが設けられ、党大会が開かれているフロアに動画コンテンツ作成の作業スペースも設置された。

ピュー・リサーチ・センターによると、既存メディアのジャーナリストが作業できる場所は過去の大会に比べて削減された。

米紙ピッツバーグ・ポスト・ガゼットの政治担当編集者ジョナサン・D・サラン氏は「私がこれまで取材した20回の党大会の中で最悪の労働条件だ」と嘆いた。

英紙インディペンデントのホワイトハウス特派員アンドリュー・ファインバーグ氏はX(旧ツイッター)上で、取材しようにもテレビカメラ撮影ブースの近くに行くことが制限され、作業スペースも非常に高いところに設置されて危険だと不満を述べた。

民主党の大統領候補に指名されたハリス副大統領を支援する基金「サースト・フォー・デモクラシー」を立ち上げたインフルエンサーのクオンディ・ウンティニ氏は自身が持つXのフォロワー4万7400人とTikTokの約1万4000人のフォロワーに向けて写真や動画を投稿した。

ウンティニ氏はそうした投稿の中で、ジョージア州選出のラファエル・ワーノック上院議員と笑い合ったり、下院民主党トップのジェフリーズ院内総務の側近とポーズを取っている。

ハリス陣営のデジタルストラテジスト、ロブ・フラハティ氏はポリティコのイベントで従来メディアとコンテンツクリエイターについて言及し、一方がもう一方に「取って代わられることはない」と指摘。「有権者は従来より多くの媒体から情報を取得しており、クリエーターがハリス氏や(副大統領候補の)ウォルズ氏の宣伝マンになるとは期待していない」とした。

若年層に強み

従来型の報道機関は中立の立場をうたい、記事を編集するデスクを置いて事実確認の基準もあるが、米国では数年前から保守派による偏向報道批判の的になっている。一方、左寄りの国民の多くは主流メディアによるハリス氏の報道が性差別的などと主張している。

一方、TikTokで550万人のフォロワーを持ちハリス氏を支持するインフルエンサーのジョッシュ・ヘルフゴット氏は、投稿の作成や編集など全て自分一人でやっていると明かす。

ノースカロライナ大学チャペルヒル校で政治コミュニケーションを専門にするダニエル・クレイス教授は、SNSで拡散するインフルエンサーの動画が政治にあまり関心がない有権者の熱意を誘うのに役立つと語る。選挙陣営が若い有権者にアピールする際にも活用できるとした。

民主党大会に参加したインフルエンサーのイブ氏は「私たちは特に若い人たちにリーチしている」とし、11月の大統領選に「大きな影響を及ぼすことが私の望みだ」と語った。



[ロイター]


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