ウクライナの国旗=ゲッティ

 ウクライナ軍によるロシア領内への越境攻撃で、英国の巡航ミサイル「ストームシャドー」の使用の是非を巡り、各国の意見が割れている。ウクライナは「緊急に使用したい」(ポドリャク大統領府長官顧問)との考えだが、事態がさらにエスカレートすることを恐れるバイデン米政権が反対しており、使用が実現するかは不透明な状況だ。

 「英国が使用制限を緩和すれば、ロシア領の奥深くにある重要拠点への攻撃の度合いを高めることができる」。ポドリャク氏は17日の英紙テレグラフ(電子版)にそう語り、英国が早期にゴーサインを出すよう訴えた。

 ストームシャドーは射程が250キロに及ぶ強力な長距離巡航ミサイルで、英国が昨年、ウクライナに供与した。これまではクリミア半島などウクライナ領に侵攻するロシア軍に対してのみ使用し、ロシア領内で使うことはなかった。

 英紙タイムズによると、ストームシャドーの使用については共同開発したフランスに加え、米国などの同意も必要という。だが米国防総省のシン副報道官は15日、越境攻撃に言及し「事態のエスカレートを懸念している」と否定的な考えを示した。バイデン米政権は現在、ロシア領内での使用について「事実上ブロックしている」(同紙)状況と報じられている。

 スターマー英首相は7月、米ワシントンでウクライナのゼレンスキー大統領と会談した際、ストームシャドーの使用はあくまで「防衛目的」に限ると述べる一方、「防衛のためにどう使うかはウクライナが決めることだ」と使用に前向きとも取れる発言をした。このやり取りを受け、ロシアのペスコフ大統領報道官は「事態をエスカレートさせる無責任な一歩」と非難し、使用された場合は報復措置を取ると警告した。

 英国は既にストームシャドー以外の兵器については使用を許可しており、今回の越境攻撃には英主力戦車「チャレンジャー2」が実戦投入されたとも報じられている。

 ウクライナ軍は6日、電撃的にロシア西部クルスク州への越境攻撃を開始した。ゼレンスキー大統領は15日、ロシアから欧州への天然ガス輸出の拠点となっている同州の要衝スジャを制圧したとも主張した。

 欧米諸国からウクライナへの武器供与はこれまで、「自衛のため」が大義名分だったが、越境攻撃にはチャレンジャー2のほか、米国の高機動ロケット砲システム「ハイマース」が使われたとも報じられている。【ロンドン篠田航一】

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