ロシアが目と鼻の先の国境の街を走るウクライナ軍の車両(8月14日、ウクライナ・スームィ地方)  REUTERS/Viacheslav Ratynskyi

電光石火の越境攻撃でロシア西部クルスク州で74の集落を制圧、1000平方キロメートルを掌握

ウクライナ軍の総司令官が公表した新たな数字によれば、ロシア西部クルスク州への進軍を続けるウクライナ軍がこの1週間で奪取した領土面積がロシアがウクライナから奪った領土面積に追いつきつつある。

ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は、ウクライナ軍が12日までにクルスク州で1000平方キロメートル超の範囲を掌握したと明らかにした。ロシアの独立系メディア「Agentstvo」の分析によれば、これはロシアが今年これまでに奪取したウクライナ領の面積を上回っている。

ウクライナ軍は8月6日、クルスク州への越境攻撃を開始。これはロシアにとって不意打ちだったようだ。クルスク州の国境地帯には非常事態宣言が出され、大勢の住民が避難している。ロシア軍はウクライナ東部ドンバス地方の前線から、緊急にこの地域に要員を再配備せざるを得ない事態に追い込まれている。

Agentstvoによれば、ウクライナ軍は越境攻撃の開始から約24時間で、ロシアが2年半超の時間と1億7000万ドル超の資金を投じて築いたクルスク州の2つの主な防衛線を突破した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は13日、ウクライナ軍が北部スームィ州に隣接するロシア西部のクルスク州で74の集落を制圧し、さらに進軍を続けていると述べた。ゼレンスキーは国民に向けたビデオ演説の中で、「厳しく激しい戦いが続くなかでも、われわれの部隊はクルスク州で前進を続けており、ウクライナの『交換の蓄え』が増えている。現在74の集落がウクライナ軍の支配下にある」と語った。

最精鋭部隊を投入

シルスキーはゼレンスキーから、クルスク州への越境攻撃における次なる重要ステップの準備を進めるよう指示を受け、「全て計画どおりに進んでいる」と述べた。

米シンクタンク「外交政策研究所」の上級研究員であるロブ・リーは、ウクライナ軍はポクロウシク、トレツィクとチャシブヤールなどの前線に配備していた最精鋭部隊をクルスク州に進軍させたと指摘した。

ウクライナで「最も困難な前線」にいた部隊を動員したことを考えると、「ウクライナがクルスク州の作戦で目指しているのが限定的な成果ではないことは明らかだ」と彼はX(旧ツイッター)への投稿で述べた。

ウクライナ大統領府のミハイロ・ポドリャク顧問は越境攻撃の開始から2日後、ウクライナの狙いについて、将来的にロシアとの間で行われる交渉で優位に立てるようにすることだと述べた。

ポドリャクはまた、ウクライナ軍がロシア領内で進軍することで、ロシア国民を「怖がらせ」、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する信頼を揺るがす効果も見込めるとつけ加えた。

ジョー・バイデン米大統領は13日、ウクライナによる越境攻撃はプーチンにとって「真のジレンマを生み出した」と述べ、「展開中の作戦について私に言えることはこれが全てだ」とつけ加えた。

米ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官は記者団に対して、アメリカは「今回の作戦とは関係ない」と述べた。「われわれは一切関与していない。ウクライナ側とは今後も対話を続けていくが、どのようなアプローチを取るのか、それを説明する責任はウクライナにある」

米政府はウクライナによるクルスク州侵攻について、ロシア領内での武器使用に関するアメリカの方針と矛盾はないとしている。

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