ハリス米副大統領がトランプ氏のリードを奪った。米政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が8月9日に集計した全米世論調査の平均で、ハリス氏47.6% トランプ氏47.1%となり、ハリス氏がトランプ氏を逆転した状態が続いている。

また、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は10日、ニューヨーク州東部にあるシエナ大学との共同で、大統領選挙に関する世論調査を実施した。世論調査の対象は、ミシガン州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州の激戦3州。その結果、バイデン大統領が再選を断念して以来、民主支持の兆候が調査で示されたと、ニューヨーク・タイムズが報じた。調査のサンプル数は約600人。激戦3州での支持率は、いずれも、トランプ氏が46%、ハリス氏が50%の結果で、ハリス氏が4ポイントのリードとなり、接戦を保った拮抗状態から、僅ハリス氏優勢となった。

大統領選で、民主党から指名を受けたハリス氏が、副大統領候補として、ミネソタ州の知事、ティム・ワルツ氏(60)を選出した。ワルツ氏は、中西部ネブラスカ州で生まれ、労働者階級の家庭で育った。州知事の就任前は、公立高校の教師として地理を教えながら、アメリカンフットボールのコーチをしていた。陸軍州兵として、24年間の兵役に従事した経歴を持つ。2007年からは、ミネソタ州から出馬し、下院議員に当選、連続6期12年を務めた。2019年に州知事に就任し、2期目に入ったワルツ氏は、これまで、「中間層への減税」、「学校給食の無償化」、また、「労働者への有給休暇の拡大」など、庶民に向けた政策を推進してきた実績を有する。

ハリス氏は8月4日に、自宅でワルツ氏の最終面談を1対1で行った。米CNNによると、ワルツ氏は面談で、「自分は激戦州出身でもなければ有名人でもない。討論も下手だ」と自らの弱点を素直に打ち明けた。ハリス氏から、副大統領の役割を問われた際にワルツ氏は、「チームプレーヤーになる。ハリス氏が望むように仕事をこなす」と回答し、ハリス氏に見せた忠誠心が決め手になったと報じられた。

副大統領候補にワルツ氏が確定して以降、トランプ陣営は、ワルツ氏を親中派と呼びはじめ、早速攻撃を仕掛けた。トランプ政権で駐ドイツ大使などを務めたトランプ氏側近の1人であるグレネル氏は、「中国共産党はワルツ氏の副大統領候補指名に喜色満面だ」とSNSに投稿した。トランプ氏も、米FOXニュースのインタビューで、「ワルツ氏は早急に国が共産主義化することを望んでいる」と攻勢をかけた。ワルツ氏は、天安門事件が起きた1989年から1990年にかけて、中国広東省で英語を教えていた。ワルツ氏の結婚記念日は6月4日。1989年に、北京の天安門広場に民主化を求める学生らを、政府が武力弾圧した「天安門事件」が発生した日に、結婚したことを明らかにしている。下院議員時代には、2017年の香港人権・民主主義法を含む、多くの法案を共同提案した。共和党からの親中派批判に対して、ハリス陣営では、「ワルツ氏はこれまで中国の人権侵害を批判してきた」と反論した。

★ゲスト:峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所・主任研究員)、三牧聖子(同志社大学大学院准教授)
★アンカー:杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)

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