訓練で木立に紛れるフィンランド兵 Notify/YouTube

<北欧2カ国のNATO加盟に対抗した軍の再編に続き、ミサイル部隊などを西部国境に新たに配置したとの報道が>

ロシアはNATOとの大規模な武力紛争に向け、軍の一部の増強を進めているとの分析を、アメリカのシンクタンク、戦争研究所(ISW)が4月19日、明らかにした。

ISWはロシア政府寄りの日刊紙イズベスチヤが、ロシア国防省が新設されたレニングラード軍管区の増強を行っていると報じたのを受けて分析を行った。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は昨年12月、フィンランドがNATOに加盟したことへの対抗措置として同軍管区の新設を明らかにしていた。

ロシア国防省の消息筋はイズベスチヤに対し、フィンランドと国境を接するロシアのカレリア共和国に弾道ミサイル「イスカンデルM」を運用するミサイル旅団を展開させたと語った。戦車師団を置くことも検討されているが、まだ決定には至っていないという。

またロシアは、この地域に空軍と防空軍を新たに配置。これは戦闘機や爆撃機の連隊や防空部隊、通信隊で構成されるとイズベスチヤは伝えている。

本誌はロシア国防省に電子メールでコメントを求めたが回答は得られていない。

ロシア海軍バルト艦隊の元司令官、ウラジーミル・バルエフはイズベスチヤに対し、これはフィンランドのNATO加盟に対する対抗措置であり、ロシアの西部国境の軍事力増強が狙いだと述べた。

「どんな可能性もありうる」とプーチン

バルエフは「最悪の場合、ミサイル旅団は脅威となるNATO軍に関する任務をこなすことになるだろう。ロシアはフィンランド(の動き)を注視しなければならない」と述べた。

プーチンがウクライナに大規模侵攻したことで安全保障上の脅威が高まり、フィンランドはNATO加盟を急いだ。北大西洋条約の第5条には、加盟国が1国でも攻撃を受けた場合は全加盟国への攻撃と見なすという集団防衛の規定がある。

フィンランドと隣国スウェーデンの加盟により、NATO加盟国は32カ国に増えた。これに対抗して、ロシア国防相セルゲイ・ショイグは3月、2つの軍と30の編隊を年内に新設すると明らかにした。

この計画には、ロシアの軍管区の再編や、軍全体の兵員数を120万人から150万人に増やすことも含まれる。だが専門家は、規模を拡大するにしても、きちんと人員を配置し、訓練し、装備を施すことができるのかと疑問を呈している。

だがプーチンと政権幹部はウクライナ侵攻はロシアの存続を賭けた西側との戦いの一環だと主張し、侵攻の長期化を正当化しようとしている。

アメリカのジョー・バイデン大統領ら、ウクライナを支援する国々のトップは、ロシアはウクライナに留まらず、その先にあるNATO加盟国にも狙いを定めていると警告している。

プーチンはそうした主張を「ナンセンス」と一蹴してきた。だが、ロシア政府や親ロシア派メディアなどが発するメッセージはあいまいな上、プーチンは3月の大統領選挙で勝利した後、NATOとの対立に関して「どんな可能性もありうる」と述べている。

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