サウジアラビアが進める「ザ・ライン」の完成予想図 Corona Borealis Studio/Shutterstock

<サウジアラビアが進める野心的なスマートシティ計画NEOMの一部である「ザ・ライン」という直線型都市の屋上にスタジアムが設置されるという>

世界がパリ五輪で盛り上がっているなか、2034年FIFAワールドカップの招致に名乗りを上げているサウジアラビアが、目玉となる施設を発表した。それは同国が開発中の「直線型都市」の一部、地上350メートル超の崖の上に建設された巨大建造物の屋上に設置された4万6000人収容のスタジアム。とても現実とは思えないSFのような建設予定図が公開され、人々を驚かせている。

■【画像】サウジの「新スタジアム」が凄すぎる...「都市の上部」地上350メートルに設置された完成予想図を公開

サウジアラビアサッカー連盟がFIFAのジャンニ・インファンティーノ会長に提出したワールドカップ開催招致書によれば、紅海沿岸に建設中のこのスタジアムは「世界で最も象徴的なランドマークの中でも際立つように設計」されているという。

ワールドカップの招致は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が推し進める2030年までの国家改革戦略「ビジョン2030」の重要な要素であり、建設費用5000億ドルのスマートシティNEOMはその中でも最も野心的なプロジェクトの一つだ。

全長約170キロ、幅約200メートルの都市「ザ・ライン」

NEOMは4つのプロジェクトで構成されており、そのうちの1つである「ザ・ライン」は全長約170キロ、幅約200メートルという1本の細長い線のような「直線型都市」で、高さ約500メートルの鏡貼りの壁が挟み込むように立っている。 住みやすさと効率性を最大限に追求すると、都市は1本の線(ライン)になるのだという。

「MBS」と呼ばれることも多いムハンマドは250ページに及ぶプロジェクト文書の序文で「われわれは偉大な歴史・文明遺産の中で多様な観光、文化、スポーツ体験を提供することを目指している」と書いていた。

NEOMスタジアムはトレーニング場、ホテル、ファンフェスティバル会場を含む「ヒドゥン・マリーナ(隠れたマリーナ)と呼ばれるスマートシティの第一段階の一部となる。スタジアムの設計についても現時点では基本的な完成予想図があるだけで、そのほかの詳細はほとんど公表されておらず、建築家が誰かも明らかにされていない。

サウジアラビアは、ワールドカップの開催地に決定した場合には新たに11のスタジアムを建設する計画を立てている。サウジアラビアは2034年FIFAワールドカップの開催国として唯一立候補している国であり、12月11日に行われる211の加盟連盟の会議で正式に開催国に決定する見通しだ。

サウジアラビアW杯は5都市15スタジアムで開催予定

サウジアラビアの計画によれば、ワールドカップはリヤド、ジェッダ、アルコバール、アブハとNEOMの5都市にある15のスタジアムで開催予定だ。首都リヤドにはこのうち8つのスタジアムが建設され、その中には開会式と決勝戦の会場となる予定のキング・サルマン・インターナショナル・スタジアム(9万2000人を収容可能)も含まれている。同スタジアムはワールドカップの開催後、サウジアラビアの国立スタジアムとして使用される予定だ。

計画は全試合をサウジアラビアが単独で開催する予定だが、一部の試合を周辺国で開催する可能性も取り沙汰されている。

スポーツやエンターテインメントのイベント開催は、サウジアラビアの経済と社会の多様化を目指す「ビジョン2030」計画の重要な要素だ。一連の会場の建設費用は、今後10年で数千億ドル規模にのぼると見込まれている。

サウジアラビアが発表した2034年ワールドカップの招致計画は、カタールが2022年ワールドカップに向けて行った国家近代化計画に通じるものがある。だがカタール同様、サウジアラビアも人権問題や反体制派、人権活動家の扱いについて国際社会から批判を受けている。

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