バイデン米大統領=ホワイトハウスで2023年10月25日、西田進一郎撮影

 パレスチナ自治区ガザ地区で続くイスラエルとイスラム組織ハマスとの戦闘を巡り、停戦の実現を目指してきたバイデン米政権の戦略が困難に直面している。

 ハマスの最高指導者ハニヤ氏の暗殺で、米国などが仲介する停戦交渉が暗礁に乗り上げる恐れが出ているほか、イスラエルに対してイランやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラが「報復」する懸念も高まっている。米政権は外交で緊張緩和を図りたい考えだが、先行きは不透明だ。

 「エスカレーションが差し迫っている兆候はないが、状況を注視している」。カービー米大統領補佐官は7月31日の記者会見で、イスラエルによるとみられるハニヤ氏殺害の事実確認は避けた一方、情勢悪化に懸念を示した。ガザの停戦交渉への影響については「判断するのは時期尚早だ」と述べ、今後も合意に向けて取り組む姿勢を強調した。

 また、ブリンケン米国務長官は31日、ハニヤ氏の殺害について「(事前に)我々は知らなかったし、関与もしていない」と述べた。その上で、「ガザでの停戦があらゆる場所で(緊張の)熱を冷ます最善の方法だ」として、今後も停戦に向けた外交的な努力を続けると説明した。

 ただ、ガザ情勢を巡っては、バイデン政権の指導力に疑問の声が出ているのも事実だ。イスラエルに自制を求める一方でその自衛権は支持し、大半の兵器の供給も続けるという政策には、米国内でも批判が高まっている。

 「政治的な保身のために戦闘を継続している」とも指摘されるイスラエルのネタニヤフ首相が、バイデン政権の要請にどこまで真摯(しんし)に対応しようとしているのかも判然としない。

 バイデン氏は11月の大統領選での再選を断念しており、「レームダック(死に体)」化への懸念が指摘されている。バイデン政権は、今後も難しいかじ取りを迫られそうだ。【ワシントン松井聡】

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