銃撃事件でトランプ前大統領の求心力が高まり、「ほぼトラ」とまで言われた状況が一転。バイデン氏の大統領選撤退を受け、一気に旋風を巻き起こしているのがカマラ・ハリス副大統領です。

いったいどんな人物なのか、ユニークな生い立ちや“初めてづくし”のキャリアをひも解きます。SNSで急速に拡散されている動画や、「ココナッツ」の絵文字が象徴する若者からの指示の背景とは?手作り解説でお伝えします。

■差別を目の当たりにしてきた移民2世

急展開で民主党の大統領候補になる見通しとなったハリス氏。彼女を支持するシンボルとして、若者の間で急速に広まっているのがココナッツの絵文字です。

きっかけとなったのは、ハリス氏が子どものころ「あなたはココナッツみたいに、ただ木から落ちてきたわけじゃないのよ」と母親に諭されたエピソード。「人は世代を超えたつながりのなかで、社会とともに生きている」という教えとされますが、この話を紹介する時のハリス氏の楽し気な表情などが、若者たちの心をつかんでいるといいます。

その母親は、インド出身で「がん」の研究者。父親はジャマイカ出身で経済学者。ハリス氏は移民2世としてカリフォルニア州で生まれ、両親の離婚後、母親に育てられました。

母親が、肌の色や訛りのある英語によって差別を受けるのを目の当たりにして育ち、黒人差別の撤廃を求める公民権運動にも幼い時から連れられて行っていたからでしょうか、ぐずった時に「何がほしいの?」と母親が聞くと「フリーダム=自由」と答えることもあったそうです。

■卓越したキャリア

政治の世界に入る前は、検察官としてキャリアをスタートしたハリス氏。黒人女性としては初めて、州の司法長官にまで昇りつめます。

その当時、大きなうねりとなっていったのが、黒人が白人警官の暴行によって死亡した事件などに抗議する「ブラック・ライブズ・マター」運動。ハリス氏はカリフォルニア州の司法長官として、警察官の暴力を抑止するため、全米で初めて警察官にボディカメラの装着を義務付けました。

こうした成果が注目され、2016年、上院議員に当選。2020年には民主党の大統領候補に名乗りを上げ、バイデン政権で副大統領に指名されたのです。黒人・女性・アジア系のいずれにおいても、初めての副大統領でした。

■多様性の象徴も人気が低迷

一方、副大統領に就任後は、人気が低迷します。

原因の1つが難題の不法移民対策。その指揮を任されたハリス氏ですが、「移民に寛容」という期待もあって、違法に国境を越えてアメリカに入ろうとする人々が急増。不法移民の数は過去最多を記録し、トランプ氏の格好の攻撃材料にもなったのです。

また、ハリス氏の副大統領室では「ひどい扱いを受けた」などと訴えて辞任するスタッフが相次いだため、統率力を疑問視する見方も出ていました。

■「ほぼトラ」情勢に変化が…

ただ、こうした見方も、風向きが変わりつつあります。

最新の世論調査では、バイデン氏よりもトランプ氏との差が縮まっています。特に、34歳以下の若者に限って見てみると、トランプ氏を逆転。バイデン氏との差は歴然です。

今後、民主党は、8月7日までにハリス氏を正式指名する見通し。トランプ氏との直接対決となる討論会は、9月に提案されています。

「ほぼトラ」と見られていた情勢を一転させたハリス氏。11月の投票日へ向け、いよいよ、トランプ氏との本格的な戦いが始まります。

(「サンデーモーニング」2024年7月28日放送より)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。