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<バイデン大統領が大統領選からの撤退を発表した翌日、ハリス副大統領がたどたどしい演説をする動画がSNSで拡散されたが、AIを使ったフェイク動画であると判明した。背景、元動画、手法を紹介する>

ジョー・バイデン米大統領が、2024年大統領選挙からの撤退を突然決めたことで、バイデンから民主党候補に推薦されたカマラ・ハリス副大統領をめぐる新たな誤情報が拡散された。

【動画】ぎこちないスピーチ...拡散されたハリス米副大統領のフェイク動画

バイデンは現地時間7月21日、大統領選からの撤退を発表。6月末に行われたトランプ前大統領との討論会を受けて、年齢や大統領としての適性をめぐる懸念が拡大し、撤退を求める圧力に直面していた中での決断だった。

81歳のバイデンは、ソーシャルメディア上に発表したメッセージの中でハリスを支持し、民主党員たちに対して「今こそ団結してトランプを打ち負かす時だ」と呼びかけた。

My fellow Democrats, I have decided not to accept the nomination and to focus all my energies on my duties as President for the remainder of my term. My very first decision as the party nominee in 2020 was to pick Kamala Harris as my Vice President. And it's been the best... pic.twitter.com/x8DnvuImJV

— Joe Biden (@JoeBiden) July 21, 2024

共和党が民主党に対する攻撃ラインを再編成する中で、ある動画クリップがソーシャルメディアで注目を集め始めた。ハリスがたどたどしく、ぎこちないスピーチをする動画だ。

X(旧ツイッター)ユーザーのCherylWroteItが7月22日に投稿した動画の中でハリスはこう述べている。

「今日は今日で、昨日は昨日の今日です。明日は明日の今日になります。だから今日を生きましょう。未来の今日が過去の今日と同じになるように、明日と同じであるように(Today is today, and yesterday is today yesterday. Tomorrow will be today tomorrow, so live today so the future today will be as the past today, as it is tomorrow.)」

同ユーザーは「私たちが、別世界に生きているに違いない。この女性が薬物リハビリ施設か精神療養施設に入らずに済み、それどころか大統領選の指名候補の本命として推薦されるなんて、それ以外に説明がつかない」と投稿。

「正直なところ...こんな人物に投票しよう、と本気で検討できてしまう人たちはどうかしている」と綴り、「社会はそれほど堕落していないし、最低限の常識くらいは失っていないはずだ」と続けた。

その言動が気取っているとして、ハリスはこれまでにもからかわれてきた。バイデンが大統領選から撤退し、ハリスを後継候補に指名したと報じられると、保守系メディアはハリスが笑っている場面などのまとめ動画を作成し始めた。

今回の動画クリップの元ネタとなったのは、ハリスが繰り返し使用し、またそのために嘲笑の的となってきた、次のようなフレーズだ。「前例から解き放たれて何を成し遂げられるかを、私は想像することができる(I can imagine what can be and be unburdened by what has been)」

Xにポストされた動画には、このおなじみのフレーズをアレンジしたような発言が含まれている。だが、この動画は本物ではない。

今回のフェイク動画は、ハリスが2023年にハワード大学で行った人工妊娠中絶の権利擁護に関するスピーチの映像を使っている。このときのスピーチは、ニューヨーク・ポスト紙がいくつかの場面を「言葉のサラダ(まとまりがないこと)」と呼ぶなど、一部でからかいの的となった。

ハリスは、そのスピーチでこう述べている。

「私がとても重要だと思うのは、これまで多くの素晴らしい指導者たちから聞いたように、あらゆる瞬間において――そして確かにこの瞬間においても――私たちが存在し、居合わせているその瞬間を目にすること、そしてそれを文脈化できること、自分たちが歴史の中に、それも過去だけでなく未来につながる瞬間のどこに位置するのかを理解することだ」

このスピーチ動画には複数の単語が繰り返し用いられており、それらを使って、人工知能(AI)によるフェイク動画が生成された可能性がある。

ホワイトハウスで入手できる書き起こし全文をチェックしても、ハリスが、今回ソーシャルメディアで共有された動画に出てくるのと同じフレーズを口にした記録はない。

結論、この動画は偽物だ。

ソーシャルメディアに投稿された、意味の通らないハリスのスピーチ動画は本物ではない。2023年に同氏が行ったスピーチを基にAIが生成した動画とみられる。

冗長な言い回しがからかわれていたスピーチだが、今回拡散された動画にあるようなハリスの発言は、ホワイトハウスの公式な書き起こしでは確認できない。

このファクトチェックは、ニューズウィーク米国版のファクトチェックチームによって行われた。
(翻訳:ガリレオ)

<編集部注:7月24日10時時点で、CherylWroteItの投稿が削除されていることを確認しましたが、同ユーザーが投稿したハリスの動画は他のユーザーたちによって拡散されています>

7月22日に拡散されたハリス米副大統領のフェイク動画

"Today is today. And yesterday was today yesterday. Tomorrow will be today tomorrow. So live today so that future today will past today, as it is tomorrow."

-- Kamala for President, 200 IQ pic.twitter.com/4WYLqyxnQL

— JaguarAnalytics (@JaguarAnalytics) July 21, 2024

嘲笑の的となってきた元ネタとなるスピーチ

"I can imagine what can be and be unburdened by what has been... ya know?"pic.twitter.com/S4X5mfGKRm

— RNC Research (@RNCResearch) May 2, 2024

服装や背景がフェイク動画と完全一致、2023年のスピーチ

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