トランプ前米大統領から副大統領候補に起用され、共和党全国大会の会場に姿を見せたJ・D・バンス連邦上院議員=米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで2024年7月15日、秋山信一撮影

 米共和党全国大会が15日、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで開幕した。11月の大統領選に向けてドナルド・トランプ前大統領(78)を正式に党候補に指名。副大統領候補には中西部オハイオ州選出のJ・D・バンス連邦上院議員(39)が起用された。

 トランプ氏は13日の銃撃事件後、初めて公の場に姿を見せた。銃弾が貫通した右耳には白い医療用のガーゼを付けており、来場者に手を振って健在ぶりをアピールした。18日には大統領候補の指名受諾演説を行う予定。

 党大会は18日まで開かれ、各州の代議員ら約5万人が参加する。トランプ氏は事前に米メディアに「事件後に演説原稿は全面的に書き換えると決めた」と説明。政治的暴力への非難が党派を超えて高まる中、民主党への批判よりも「米国の団結」に重点を置く考えを示している。

 ライバルの民主党がジョー・バイデン大統領(81)の出馬の是非を巡って動揺する中、共和党は正副大統領候補を中心に結束を強調する構えだ。

トランプ前大統領が共和党全国大会で大統領候補に指名されたことを喜ぶ支持者ら=米中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーで2024年7月15日、秋山信一撮影

 党大会初日は、直前になっても伏せられていた副大統領候補の発表に注目が集まった。トランプ氏は開幕直後、自身のソーシャルメディアで、バンス氏の起用を発表した。「長い間熟考し、他の才能ある候補も検討した結果、最もふさわしいと判断した。憲法のために闘い、軍に寄り添い、私が米国を再び偉大にするのを助けてくれるだろう」と期待感を表した。

 バンス氏は、ラストベルト(さびついた工業地帯)の白人労働者の窮状を描いた回想録「ヒルビリー・エレジー」(2016年出版)の著者として知られる。

 22年中間選挙で上院選に出馬し、「トランプ派」の象徴的候補として注目され、初当選した。トランプ氏は15日の声明で「バンス氏は中西部などの労働者や農家のために闘っている」と紹介。ラストベルトにある接戦州の東部ペンシルベニア、中西部ミシガン、ウィスコンシンの3州での支持拡大への期待感を示した。

 一方、バンス氏は16年、当時大統領選に出馬していたトランプ氏を「皮肉屋の間抜け」「米国のヒトラー」と批判した過去がある。今後、過去の言動との食い違いを問われるのは必至だ。また、ロシアの侵攻を受けるウクライナへの支援継続に強硬に反対していることについて、共和党内からも批判がある。

 党大会初日には、大統領選や同時実施の連邦上下両院選に向けた「公約」となる政策綱領も採択された。「米国を再び偉大に」「米国第一主義」などの選挙スローガンが盛り込まれ、共和党の「トランプ党」化を象徴する綱領となった。

 一方、綱領には連邦法による人工妊娠中絶の規制強化は盛り込まれず、反発した保守派など一部が反対に回った。

 共和党は11月に上下両院選でも勝利して、ホワイトハウスを合わせた「トリプルレッド(党カラーの赤)」を実現し、予算案や法案の策定で主導権を固めることを狙う。政策面で保守色を抑えることで、無党派層や共和党穏健派の票獲得につなげたい思惑がある。【ミルウォーキー秋山信一、八田浩輔】

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