11月の米大統領選で再選を目指す民主党のジョー・バイデン大統領(81)を巡り、選挙戦を資金面で支える献金者からも撤退圧力が強まっている。米紙ニューヨーク・タイムズは12日、一部の大口献金者が陣営の資金管理団体に対し、バイデン氏が大統領候補にとどまれば、9000万ドル(約143億円)規模の献金を凍結すると伝えたと報じた。大口献金者の支持離れは既にエンターテインメント業界や金融業界で広がっており、バイデン氏への逆風は強まり続けている。
米大統領選ではテレビ広告費用などを賄うため、候補者には豊富な資金力が求められる。
ニューヨーク・タイムズによると、大口献金者が献金凍結を伝えた団体は、バイデン陣営最大の特別政治活動委員会(スーパーPAC)「フューチャー・フォワード」。スーパーPACは選挙広告費用などに使う資金を管理し、特定候補を支援するため無制限に献金を集めることができる。フューチャー・フォワードは8月に開かれる民主党大会の後、テレビやデジタルの広告に2億5000万ドルを投じると発表していた。
バイデン氏を巡っては6月下旬、復権を狙う共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)との大統領選討論会で高齢不安が再燃した。以降、民主党員や支持者から選挙戦撤退を求める声が拡大している。
代表的なのが、民主党支持者が伝統的に多いといわれるエンタメ業界だ。今月初めには、動画配信大手ネットフリックスの共同創業者、リード・ヘイスティングス氏が選挙戦からの撤退を呼び掛けた。同氏は夫妻で2000万ドルを献金したと報じられていた。
米CNBCテレビによると、ディズニー家の財産相続人であるアビゲイル・ディズニー氏も、バイデン氏が立候補を取り下げるまで同党への献金を凍結すると発表した。ディズニー氏は声明で「バイデン氏は立派に国のために奉仕してきた」と評価。一方で「バイデン氏が撤退しなければ、民主党は(選挙に)負けるだろう」と述べた。
こうした声は、ニューヨークのウォール街からも出ている。バイデン氏を支持する企業幹部の一人はニューヨーク・タイムズに対し、撤退は「不可避」だと指摘。選挙戦から身を引くことは時間の問題だとの見方を示した。
大統領選を巡り、バイデン氏は既に資金面で劣勢に立たされている。米メディアによると、トランプ陣営は今年4~6月に3億3100万ドルを調達。これに対して、バイデン陣営と民主党全国委員会は2億6400万ドルを集めた。バイデン陣営は、調達した資金の95%は200ドルより少ない小口献金で、討論会が実施された6月27日以降だけで、3300万ドル以上を集めたと強調する。
ただ、米ABCテレビなどが7月上旬に実施した世論調査では、民主党支持層の56%が「撤退すべきだ」と答えた。支持離れが今後も進めば、バイデン氏は資金調達に苦労する可能性がある。【ニューヨーク中村聡也】
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