警察と対峙するデモ参加者は決死の覚悟......とは限らない(4月、ニューヨーク) AP/AFLO
<逮捕者が500人近くに及んだ米大学での反イスラエルデモ。参加した学生たちは「決死の覚悟」のように見えるが、逮捕によって人生を棒に振ることはないという──>
今や米ニューヨークの街角風景と化しているのが抗議デモ。昨年10月、ハマスの越境テロを契機にイスラエル国防軍がガザへの攻撃を開始して以来、ニューヨークでは大規模なデモが続いている。
特にコロンビア大学とニューヨーク大学では、ガザ情勢の悪化に伴ってパレスチナ支持派のデモが激化した。最終的には警察が動員され、キャンパスを占拠していたデモ隊の多くは逮捕された。4月から5月にかけて、逮捕者の総数は500人近くに及んでいる。学外者も交ざるが、大半は両大学の学生だ。
コロンビア大学とニューヨーク大学といえば、アメリカを代表するエリート校だ。その学生が逮捕覚悟で運動をしているというのは、それだけ意志が強固だから? いや、それだけではない。今のアメリカで、特にニューヨーク市においてデモを行って逮捕されても、ユルイ結果で済みそうなのだ。
たとえデモ参加で逮捕されても、人生を棒に振るような悲壮な事態になることはない。
そもそも、逮捕容疑が国家反逆やヘイトになることはないだろう。事前に発令された退去要請を無視したなどとして業務妨害や私有地占拠などの容疑で逮捕されるのが大方のパターンだ。要するに逮捕といっても微罪である。
また、身柄は拘束されるがその時間は短い。身分が特定され、写真撮影と指紋押捺を済ませ、法廷への召喚状が交付されれば、たった数時間から半日で釈放になる。
逮捕学生も警察も、その際に一番気にすることは──取り上げたスマホなどの私物が間違いなく本人に返却されたかどうか、という点なのだ。
一部の金融大手は、デモに参加した学生は就活時に採用しないなどと脅しているが、法的拘束力はなく、学生へのプレッシャーにはなっていない。また、親パレスチナのデモ隊が逮捕拘束された際に水や食事が提供されない事態も発生したが、この一件は警察の失態として処理された。
いずれにしても、学生は堂々とデモをして逮捕されるし、警察は淡々と逮捕を執行して裁判所に書類を送るというのが、ニューヨーク流。これはベトナム反戦運動以来の伝統とも言える。
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