NATO75周年の式典に出席したバイデン米大統領(右から3人目)やトルコのエルドアン大統領(右端)ら加盟各国の首脳たち=ワシントンで7月9日、ロイター

 北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議が9日(日本時間10日)、ワシントンで開幕した。関連のイベントで講演した米国のサリバン大統領補佐官は、全てのNATO加盟国が、自国の防衛産業の基盤を強化するための計画を策定することで合意する見通しだと明らかにした。

 ウクライナへの侵攻を続けるロシアは欧米による経済制裁などの影響を受け、軍事物資の生産が停滞。北朝鮮からミサイルの提供を受けているほか、中国から軍事転用可能な物資を輸入している。

 サリバン氏はロシアの事例に言及し、「加盟国がそれぞれ防衛産業の基盤を強化することで、(有事でも)経済が阻害されることなく、対応できる。効果的な抑止力と防衛能力を確保することに直結する」と意義を強調した。さらに「加盟国が産業における新たなパートナーシップを構築し、雇用を生み出し、経済の競争力を高めることにもつながる」と述べた。

 またサリバン氏は「欧州で起こることはインド太平洋地域に影響を与え、インド太平洋地域で起こることは欧州に影響する」と述べ、NATOがインド太平洋地域と連携を強化する必要性を強調。NATOと、今回の首脳会議に招待されている日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国が、ウクライナへの支援▽人工知能(AI)▽偽情報▽サイバーセキュリティー――について、共同の取り組みを始めることも明らかにした。

 一方、米国、オランダ、ドイツなどは9日に声明を発表し、ウクライナの防衛能力強化のため、防空システム5基を供与すると発表した。

 9日はNATOの設立75周年に合わせた式典も開催された。NATOのストルテンベルグ事務総長は「ロシアがウクライナに勝利することが、最も大きなリスクだ」と述べ、ウクライナ支援を継続する重要性を改めて訴えた。

 首脳会議は11日まで行われ、ウクライナへの安定的な支援の在り方などが主な議題となる。【ワシントン松井聡】

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