米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は9日、米上院の公聴会に出席し、物価上昇(インフレ)について「直近の指標は緩やかな改善を示している。より良いデータが出れば、インフレ率が持続的に2%に向かうとの確信が強まるだろう」と述べた。労働市場の過熱が収まりつつあり、金融引き締め長期化による経済悪化リスクにも目配りしながら利下げ時期を慎重に探るとみられる。
パウエル氏は、最近の米労働市場について「一連の指標はパンデミック前とほぼ同じ水準に戻ったと示唆している。力強いが過熱はしていない」と述べ、インフレ圧力となっていた人手不足が緩和されつつあると指摘。これに伴い賃金の伸びも鈍化し、インフレ沈静化に向け進展があったとの認識を示した。
そのうえで「過去2年におけるインフレ率の低下と労働市場の冷え込みを考慮すれば、インフレは我々が直面する唯一のリスクではない」と述べた。景気の悪化リスクにこれまで以上に目配りする考えとみられる。
一方で「インフレ率が持続的に2%に向かうとの確信を得るまで、利下げは適切ではない」との慎重姿勢も強調。インフレ再燃と経済悪化の二つのリスクを見極めながら、利下げ時期を慎重に探る構えを示唆した。
6月の米失業率は4・1%と2021年11月以来の水準に悪化。5月の米消費者物価指数も前年同月比3・3%上昇と2カ月連続で前月の伸びを下回っている。【ワシントン大久保渉】
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