定数が拡大した今回選挙への有権者の関心は高かった(首都ウランバートル) B. RENTSENDORJーREUTERS

<総選挙の結果、与党・モンゴル人民党が僅差で過半数を得たが野党も勢力を伸ばし、連立政権の模索へ。若手が多数当選でも、公平性の不足が選挙監視団からは指摘されている>

その日、モンゴル各地で大勢の人が投票所に列を成した。

6月28日に実施された総選挙はモンゴル近代史上、最も重要な選挙の1つだった。憲法改正で、議員定数が76議席から126議席に増えた新たな議会は、民主主義や統治、発展をめぐる政策の策定に重大な役割を果たすことになる。


勝利したのは与党・モンゴル人民党だが、獲得議席数は僅差の過半数である68議席。野党の民主党や人間党、新国民連合が勢力を伸ばし、連立模索の動きが報じられている。

今回の総選挙では、環境や教育、医療など、多様な分野から出馬した人々が当選した。

人民党は若年世代の指導者を候補者に抜擢し、行政府からの立候補者を多数擁立。現職の外相、文化相、デジタル開発・通信相、労働社会保障相がいずれも選出された。

民主党も若者を起用した。史上最年少の27歳で立候補したサルルサン・ツェングンは、国家的課題であるエネルギー改革を掲げて当選。火星研究プロジェクト「Mars Ⅴ」の設立者、スフバートル・エルデネボルドも議会入りした。

巨額の選挙支出も問題

その一方で、選挙過程には取り組むべき問題が見られた。

大規模な選挙監視体制やライブ配信プラットフォームにもかかわらず、ソーシャルメディアでは不正行為が伝えられた。投票締め切りのわずか数時間前には、フェイスブックとX(旧ツイッター)で、現金による賄賂や怪しげな行為の疑惑が浮上。人民党と民主党は、複数県で贈賄を行ったと非難合戦を繰り広げた。

オンラインで拡散したある動画では、人民党現職議員の支持者とみられる人物が、各自にメモが記された有権者氏名リストを手にした姿が確認できる。これは、組織的な不正選挙が仕組まれていた証拠だという声が上がった。

新国民連合のニャムタイシル・ノムトイバヤル代表は、人民党が選挙運動を妨害したと声明で発表。一例として、新国民連合候補者の選挙戦に中国人労働者300人が動員されているとのフェイクニュースを拡散したと非難した。

ノムトイバヤルは当選したが、その政治的野心には不安も付きまとう。モンゴル鉱業大手創業者の長男であり、利益相反の可能性があるからだ。

今回、最大の問題の1つは選挙運動支出の増大だ。

地元メディアによれば、支出額トップは人民党の2兆4000億ツグリク(約1128億円)。新国民連合の2兆ツグリク、人間党の1兆7000億ツグリク、民主党の1兆4000億ツグリクが続いた。支出の大半は首都ウランバートルなどに偏っていたという。


欧州安保協力機構(OSCE)が派遣した選挙監視団は、報告書でこう総評している。「公平性の不足が競争力に悪影響を与えた。民主的選挙の法的枠組みは適切だが、基本的権利・自由の国際基準にさらに対応する必要がある」

今回総選挙で、モンゴル史上、初めて在外投票が可能になり、在外投票者数は計34カ国在住の1万3095人に上った。モンゴルの民主主義にとって、最大の勝利の1つだろう。

From thediplomat.com

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