7日投開票の仏総選挙は、世論調査で2位が予測されていた左派連合「新人民戦線」が議席数で首位に立ち、首位とみられていた極右「国民連合」が3位に沈む結果となった。パリ中心部では、左派支持者が歓喜の涙を流し、極右支持者は当惑し、肩を落とした。
7日午後8時、出口調査で左派連合の優勢が報じられると、左派の支持者ら数千人はレピュブリック広場に集まり、大きな歓声を上げた。人々が抱き合う中、花火が打ち鳴らされ、近くを通る自動車はクラクションで祝福した。
教員のイリナさん(39)は「極右が怖かったので、本当に安心した。結果を知って泣いてしまった」と語った。大学生のシャイニさん(25)は「予想もしなかったうれしい結果。ここに集まった全員が自由なフランス、人種差別主義でないフランス、『イスラム嫌い』ではないフランスに投票した」と興奮気味に話した。その一方で、「国民連合に投票した人がこれだけ多かった現実を、受け止めなければならない」と続けた。
広場では、極右を批判する歌「私たちはみなアンチファシストだ」を合唱する声が深夜まで続いた。集会の解散を求める警察と一部で衝突も起き、過激な左派支持者らが警察に抗議し、通りにあった自転車などを燃やす一幕もあった。
一方、極右連合の支持者数十人は7日夜、パリ市内の催事場に集まった。配られたフランス国旗を手に設置されたテレビ画面を見つめていたが、午後8時に出口調査の結果が報じられると、笑顔から一転、当惑した表情を浮かべた。
「何が起きたのか分からない。泣きそうだ」。パリに住む大学生のジョセランさん(19)は落胆を隠さない。国民連合が第1党になり、移民の厳格管理や治安の改善に取り組むのを期待していた。「結果には不満だ。今は何と言っていいか分からない」
党スタッフのラミさん(29)は「第1党に届かず、とても悲しい。ただ、民主主義を尊重しないといけない」と結果を受け止めた。「次回の選挙では、より多くのフランス人が国民連合へ投票してくれることを期待する。当選した議員には、フランスの利益のため左派連合と対決してほしい」と語ると、会場で振る舞われたシャンパンをあおった。
鉄道会社勤務のマフワンさん(18)は「議席を大きく増やしたのだから、悪い結果ではない」と前向きに語りつつも、「国民連合が政権を取れなかったのはフランスにとって損失だ。今や極右でもなく、国にとって良い考えを提案しているだけなのに」と割り切れない様子。治安が最大の関心事だといい、左派連合が最大勢力となった結果について「左派は警察を不要だと言っている。主張通りにしたら国は内戦状態になる」と反発した。
国民連合は近年、幅広い層から支持を集めることを意識し、一方的な移民排斥や欧州連合(EU)離脱といった極端な政策を掲げるのを控えていた。それでも「極右首相」誕生への警戒感は強かったとみられる。【パリ岡大介】
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