広東省珠海で行われた航空ショーに展示された中国ドローン「翼竜」(2018)Oriental Image via Reuters Connect
<「風力タービンの部品」と偽った貨物は、重さ3トン超、翼幅20メートルにもなる軍用ドローンだった>
イタリア南部の税関・専売庁(ADM)は、アメリカの情報協力を得て1週間前から行ってきたおとり捜査により、リビアに送られる予定だった未申告の貨物を押収したと発表した。貨物の中身は「軍事ドローン」だった。
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イタリア南端にあるカラブリア州の当局は7月2日、中国からジョイア・タウロ港に到着した6つのコンテナを調べたところ、「軍事目的で使われるドローンの胴体と翼」を発見したと明らかにした。
税関当局の声明によれば、「風力タービンの部品」と偽って送られてきたこれらの部品は実際にはドローンで、組み立てると1機あたりの重量は3トン超、全長が約9.75メートル、翼幅約20メートルになる巨大なものだった。当局が公開した写真から、これらの部品は中国製の軍用ドローン「翼竜」のものであり、中国からアラブ首長国連邦(UAE)を経由してイタリアに到着した。
本誌はこの件について中国外務省にコメントを求めたが、これまでに返答はない。
中国は過去10年で軍用ドローンの開発・輸出を大幅に拡大してきた。世界各地で取引されている中国製ドローンは「翼竜」のほかに「彩虹」や「WJ」もよく知られており、購入国リストにはアルジェリア、エチオピア、インドネシア、イラク、ヨルダン、カザフスタン、モロッコ、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、セルビア、トルクメニスタンやウズベキスタンなど途上国が並ぶ。
リビアへの武器禁輸も無視
エジプト、サウジアラビアやUAEも「翼竜」を購入しており、これらのドローンがリビア東部の軍事組織「リビア国民軍」のハリファ・ハフタル司令官の手に渡ったと報じられている。ハフタルはリビア東部と南部の一部を支配し、2020年から首都トリポリで国連が承認するリビア政府と対立を続けている。
リビアは2011年にNATOの支援を受けた反体制派が最高指導者ムアマル・カダフィ政権を転覆させて以降、10年以上にわたって内戦状態が続いている。国連の禁輸措置により、地中海に面するリビアの港への(およびリビアの港からの)武器および軍装備品の移送は禁止されている。
6月18にはイタリアのコリエレ・デラ・セラ紙が、「米当局の要請により」強制捜査が行われたと報じており、今回当局がコンテナ船の強制捜査を公式発表したことで、報道が裏付けられた形だ。
同紙によれば米諜報当局は、4月に中国南部の塩田港を出発したコンテナ船「MSCアリナ」が、ハフタル率いるリビア国民軍が実効支配するリビア東部ベンガジの港に向かっているのではないかと疑っていたという。
英タイムズ紙は6月30日、イタリア当局が週末に3つの疑わしいコンテナの出荷を阻止する準備を進めていると報道した。カナダが4月にリビアへの軍装備品売却を阻止したことをきっかけに始まった長期的な調査の一環として行われたものだ。カナダでは4月に元国連職員2人が、リビアに中国製のドローンなどを売却する計画に関与したとして逮捕された。問題の計画ではその後、ハフタルが支配するリビア国内の油田から採掘された原油が中国に輸出されることになっていた。
ハフタルはロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友で、過去にはプーチンの私兵と呼ばれたロシアの民間軍事会社「ワグネル」の支援も受けていた。プーチンは2023年9月、ハフタルをクレムリンに迎えている。ロシア軍は地中海を挟んだ反対側のナポリに司令部を置く米海軍第6艦隊に対抗すべく、リビア東部のトブルク港へのアクセスを拡大したいと考えており、プーチンがハフタルとの会談を行った背景にはそうした狙いがあるとみられる。
米国務省は6月、ロシアの国有企業ゴズナクにも、10億ドル超相当のリビアの「偽札」を印刷して「リビアの経済問題をさらに悪化させた」として、ゴズナクに制裁を科した。
【画像】イタリアでの押収の現場
AADM
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