不人気同士の戦い REUTERS/Brendan McDermid and Elizabeth Frantz

<今年の大統領選で有権者の投票行動を左右するのは、自分が支持しないほうの候補者が当選したら大変なことになる、という「恐怖心」だと専門家は言う>

米大統領選挙が11月に迫るなか、ジョー・バイデン大統領が支持率でドナルド・トランプ前大統領をわずかに上回った、という新たな世論調査結果が公表された。

かつて米共和党でデジタル戦略を担当していたパトリック・ラフィーニと世論調査員のクリステン・ソルティス・アンダーソンが共同で創設した調査機関「エシュロン・インサイツ」が実施した調査では、回答者の49%が「確実に」「おそらく」または「どちらかといえば」バイデンに投票するとし、トランプに投票すると回答した人は46%にとどまった。

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調査は投票に行くと思われる有権者1020人を対象に4月12日から14日にかけて行われた(誤差範囲は±3.9%)。

本誌はこの件について、トランプおよびバイデンの代理人にメールでコメントを求めたが、返答はなかった。

3月にはバイデンとトランプがそれぞれ、大統領選に向けて政党から候補者指名を受けるのに必要な代議員を獲得。11月の米大統領選が、2020年と同じ顔合わせの対決になることが決まった。これ以降、ますます盛んに行われるようになった世論調査では、現職のバイデンが2期目続投に向けてトランプをリードしているという結果が示されることもあれば、トランプが大統領に返り咲く見通しだという結果が示されることもあり、両者の支持は拮抗してきた。

人気のない2人の候補者の接戦

こうしたなか最近の複数の調査では、バイデンがトランプをリードしているという結果が示されている。

エシュロン・インサイツによる今回の調査は、共和党系の世論調査機関が実施した調査でバイデン優勢の結果が示されたという点で重要な意味がある。また同調査では、議会選挙についても49%が民主党候補に投票すると回答。共和党候補に投票すると回答したのは46%だった。

回答者のうち38%は民主党の支持者を自認。37%が共和党を支持していると述べ、23%は無党派だと回答した。

英サリー大学のマーク・シャナハン准教授(政治学)は本誌に対して、11月の米大統領選は「接戦」であり、一度の世論調査だけでは確信を持って結果を予想することはできないと指摘した。

「一度の世論調査の結果をあまり重視すべきではない。現時点で言えるのは、今回の米大統領選が、あまり人気のない2人の候補者による接戦だということだ」とシャナハンは述べ、以下のように続けた。

「今回の選挙では、有権者の投票動機に『恐怖の要素』が強く作用する。だからこそ、エシュロン・インサイツによる調査のタイミングは興味深い。民主党支持者と無党派にとっては、トランプの2期目が実現することに対する恐怖心が投票に駆り立てる要素となる。自分たちが油断すれば、トランプを勝たせてしまうという論理がはたらく。エシュロン・インサイツの調査によれば、共和党支持者にも同様に、油断すればバイデンが再選されてしまうという恐怖心に駆り立てられているようだ」

シャナハンは、さらにこうつけ加えた。「今回の世論調査は、トランプが不倫の口止め料支払いに関する虚偽記載の罪に問われたニューヨーク州での裁判が始まる直前に実施された。この不名誉な裁判は、トランプの支持層以外の有権者、とりわけ共和党の穏健右派にトランプ離れを起こさせる可能性があるが、トランプが勝つためには彼らの支持が必要だ。今回の調査の目的は、バイデンも手強いという事実を示唆すことで、トランプへの支持をつなぎ止めることだったのではないか」

コメントを求めたところ、トランプ陣営のスティーブン・チョン報道官からは本誌宛てに、トランプがバイデンをリードしているという結果が示された2つの世論調査結果へのリンクが送られてきた。一つはトランプが5つの激戦州でバイデンをリードしていることを示すもので、もう一つは全国的な支持率でトランプ(47%)がバイデン(46%)を上回っていることを示すものだ。

米大統領選まであと7カ月。バイデンとトランプのどちらが勝利するのかをめぐる憶測は今後も続くだろう。そして11月の投票日が、アメリカ政治の将来を決める。

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