世界では今、インプットされたデータから文章や画像などを自動で作り出す「生成AI」の技術が急速に進化しています。こうした中、中国では「生成AI」を使って亡くなった人を「復活」させるビジネスが登場し、論争を呼んでいます。

「パパ、ママ、会いに来たよ」

中国のネット上にあふれるこれらの動画。実は、すべて生成AIで「復活」した死者たちです。

生前の写真や音声を元に、AIが動画を作成。

「僕はとっても会いたかったよ。元気なの?」

まるで本人がしゃべっているかのような動画ができあがります。

AIが学習することで、本人そっくりの口調で会話をすることもできます。

事故で亡くなった叔父を「復活」させ、祖母と毎日、会話ができるようにした男性は。

叔父を「復活」させた男性(35)
「ニーズを満足させてくれるサービスだと思います」

張沢偉さん(33)。去年、生成AIで死者を復活させるビジネスを始め、これまでにおよそ1000人の「死者を復活」させてきました。

始めたきっかけは、友達から「お父さんを復活させてほしい」と依頼されたことでした。

張沢偉さん
「(AIで『復活』した父を見た)友達はとても感情的になり、涙を流しました。自分たちのやっていることは、人助けになるとわかったんです」

これは、張さん自身を再現した動画。およそ1週間で完成し、費用は4000元(約8万円)からです。

事故で亡くなった子どもに、もう一度会いたい。古い写真からおじいさんを復活させてほしい。そんな願いが日々、張さんのもとには寄せられるといいます。

一方で、こんな問題も…

「中国のファンのみなさん、こんにちは。コービー・ブライアントです」

2020年に事故で亡くなったアメリカのプロバスケットボール選手、コービー・ブライアントさん。なぜか流ちょうな中国語をしゃべっています。

このように、亡くなった有名人を生成AIで勝手に復活させてしまうケースも相次ぎ、「死者への冒とく」「肖像権の侵害」といった批判があがっているのです。

先ほどの張さんは、悪用されないよう本人や家族の同意をとっているとしたうえで、生成AIの可能性について次のように話します。

生成AIで死者を「復活」 張沢偉さん
「私は今、人々を救っていると感じます。人々に精神的な安らぎをもたらしているのです。私の夢は、普通の人がデジタルの力で『永遠に死なない』ことを実現することです」

急速に進むAI技術がもたらすのは心の救済か、それとも死者への冒とくか。重い問いを投げかけています。

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